豚舎汚水の連続式活性汚泥処理を経た放流水の茶樹に対する肥料的効果


[要約]
電気伝導度による全窒素濃度の推定が可能な放流水を茶の栽培に利用する一手法として、窒素施用量の50%を硫安から放流水に含まれる窒素によって代替することにより、茶樹の乾物重や窒素量を指標とするその生育は、化成肥料のみの場合と同等である。

[キーワード]放流水、連続式活性汚泥法、肥料成分、茶

[担当]静岡畜研中小・資源循環科
[代表連絡先]電話:0537-35-2291
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(畜産環境)
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
豚舎からの汚水は連続式活性汚泥法を主とした処理が普及している。汚水浄化過程を経た放流水は、悪臭がほとんどなく、窒素等の肥料成分を含むため、農作物の栽培において利用できる可能性がある。本県の場合、豚舎付近には茶園が比較的多く存在し、茶園における施肥量の一部を放流水に含まれる肥料成分によって代替することが可能となれば、資源循環の立場から有用な手法の一つになると考えられる。そこで、連続式活性汚泥法による処理施設を対象に、放流水中に含まれる肥料成分量の把握、特に茶の栽培で重要な窒素について調査し、放流水の施用が茶の生育に及ぼす影響について検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 県内の連続式活性汚泥法による汚水処理施設から排出される放流水には、窒素やリン等の主要な肥料成分が含まれている(表1)。
2. 放流水中の全窒素濃度は、簡易測定が可能な電気伝導度(EC)との間に正の相関関係があり、放流水のEC値が高い施設の場合、全窒素濃度は高い(図1)。
3. 茶樹に施用する窒素量の50%を、硫安から放流水に含まれる窒素によって代替することにより(表2)、試験期間中における茶葉の養分欠乏症や過剰障害等は観察されず、試験終了時における茶樹の乾物重や窒素量は、施肥を行わない無施用区の値よりも高く、硫安由来の窒素を施用する対照区の値と同等である(図2)。このことから、豚舎汚水の連続活性汚泥処理を経た放流水中の肥料成分を利用した茶栽培の可能性が示唆される。

[成果の活用面・留意点]
1. 赤黄色土壌が充填されたワグネルポット(1/5000a)において、露天下で栽培された3年生の「やぶきた」による調査結果である。
2. 放流水は、塩素等による消毒前に採水したものであり、茶樹に施用した放流水の塩素濃度は175〜224mg/Lである。

[具体的データ]

(中村茂和)

[その他]
研究課題名:茶園における豚尿処理液の利用技術確立
予算区分:県単
研究期間:2008〜2010年度
研究担当者:中村茂和、杉山 典、黒田博道(静岡県西部家保)

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