ハウスニホンナシ「幸水」における加温開始時期の選定および発芽促進技術


[要約]
「幸水」における花芽の生育が良好で、果実品質が優れる加温開始期の花芽の生育指数(DVI)は1.5以上である。それ以前に加温を開始する場合は、発芽促進技術としてシアナミド剤とハウス内気温30℃の30時間連続高温処理の組合せが優れ、開花揃い、果実品質が良好となる。

[キーワード]ニホンナシ、自発休眠、高温処理、シアナミド

[担当]栃木農試・園芸技術部・果樹研究室
[代表連絡先]電話:028-665-7143
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
加温ハウス栽培では、温暖化条件により樹体への低温遭遇時間が不十分となると、不発芽や開花異常などの発芽不良が発生する。このような発芽不良を回避するためには、生育が良好で、果実品質が優れる加温開始期を正確に把握する必要がある。さらに、毎年安定的に発芽を良好にするためには、自発休眠ステージに適応した発芽促進技術の開発が必要である。

[成果の内容・特徴]
1. 花芽の生育時期別に加温を開始すると、開花率はDVI=1.0以上で99%以上と良好となる。花芽の生育はDVI=1.4以上で挫死がなく、花の大きさが正常で、花数の少ない果そうが増加する(表1図1)。
2. 総葉数はDVI=1.4以上で多い。果重および糖度はDVI=1.5以上で330g、12.4%を上回り果実品質が優れることから、開花が良好で樹体生育、果実品質が優れる加温開始時期はDVI=1.5以上と考えられる(表1)。
3. 花芽の生育指数DVI=1.0時点での発芽促進技術を検討した。シアナミド剤は開花を促進し、開花揃いを良好にするとともに、果重を増加する効果がみられる。高温のみの処理効果は小さいが、連続高温処理とシアナミド処理の組合せにより、開花揃いが良く果実品質が良好となる(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 試験は、根圏制御栽培樹「幸水」を用い、露地において一定の低温遭遇時間に達した樹を加温ハウス内(最低気温15℃)に搬入して行った。
2. 生産現場で加温開始以降の最低気温を12℃以下に設定する場合、加温開始以降も花芽の生育が進むことから、DVI=1.5以前でも加温開始は可能と考えられる。
3. シアナミド剤処理直後に加温を開始すると、花芽の障害や枝枯が発生することがあるため、シアナミド剤は加温開始1~2週間前に処理を行う。
4. 冬季にハウス内を30℃にするため、サイドを2重にしたりカーテンを2重にするなどの保温対策が必要である。また、2重カーテンにより高温障害が抑制される。

[具体的データ]

(大谷義夫)

[その他]
研究課題名:なしの自発休眠覚醒モデル及び新たな休眠打破法を組み合わせた発芽促進技      術の産地における実証
予算区分:農水省温暖化プロ
研究期間:2008~2009年度
研究担当者:大谷義夫

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