ブドウ栽培園におけるイヌの被毛設置によるハクビシン食害防止


[要約]
ブドウ平棚栽培園において、果実着色期から成熟期にかけて、イヌの被毛を10gずつネットに包み、平棚の柱および主幹に約1mの高さで設置すると、ハクビシンへの忌避効果によりブドウ果房に対する食害を防ぐことができる。

[キーワード]ブドウ、ハクビシン、イヌ、被毛、忌避

[担当]神奈川農技セ・果樹花き研究部
[代表連絡先]電話:0463-58-0333
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
近年、県内のブドウ栽培園においてハクビシンによるブドウ果房の食害が増加している。そこで、イヌの被毛をネットに包んで設置したときのハクビシンへの忌避効果を明らかにし、ハクビシンによるブドウ食害防止技術の一つとして確立する。

[成果の内容・特徴]
1. 熟期を迎え、ハクビシンの食害(図1A)が発生した農業技術センター内のブドウ園において、主幹及びすべての支柱と周囲柱にイヌの被毛を10gずつ入れたネット袋を設置すると(図1BおよびC)、ハクビシンによる食害はほとんどなくなり、以後、収穫終了までの15日間、忌避効果が持続する(図2)。
2. 設置箇所数は園の構造により異なるが、すべての主幹、支柱、周囲柱に設置すれば安定した効果が発揮される。部分的な設置では食害は完全に回避できない(表1)。
3. 上記の方法でイヌの被毛を設置すると、園の立地にかかわらずハクビシンによる食害は認められなくなり、高い忌避効果が期待できる(表2)。大粒ブドウの熟期より少し前の8月上旬に設置すれば、効果は主要品種の収穫が終了する9月下旬まで維持されるため、途中で交換する必要はない。

[成果の活用面・留意点]
1. 設置する高さは作業性の観点から地表0.8m〜1.2mとする。
2. イヌの被毛は、トリミング店や動物病院から入手することができる。
3. 効果の持続期間は7月下旬に設置した場合、9月中旬まで認められる。
4. アライグマ等、ハクビシン以外の動物による食害防止効果は明らかではなく、これらの被害防止を保証するものではない。

[具体的データ]
図1 ハクビシンによる食害(A)とイヌの被毛の設置の様子(B主幹、C周囲柱)
図2 ブドウ園におけるイヌの被毛設置前後の食害数の推移
表1 イヌの被毛の設置程度がハクビシンによるブドウ食害房数に及ぼす影響(農業技術センターブドウほ場、2009年度)
表2 イヌの被毛の全面設置前後のハクビシンによる被害発生状況(2009年度)

(関 達哉)

[その他]
研究課題名:落葉果樹の直売向け品種の安定生産技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:関達哉、曽根田友暁、柴田健一郎

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