リンゴ2年生わい性台木苗木の掘り上げ前の摘葉開始時期は11月中旬とする


[要約]
2年生わい性台木苗木(カットツリー)は、掘り上げ前の摘葉時期が早いと定植後の生育が劣る。概ね11月中旬の摘葉であれば、樹体のデンプン濃度が十分に高まることにより耐凍性が向上し、定植後良好な生育が期待できる。

[キーワード]リンゴ、2年生わい性台木苗木、摘葉、デンプン、耐凍性

[担当]長野果樹試・環境部・栽培部
[代表連絡先]電話:026-246-2411
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
わい性台木を用いたリンゴの苗木育成において、秋期の苗木の掘り上げは、出荷作業の都合から、自然な落葉を待たずに人為的な摘葉が行われることが多い。摘葉の時期が早すぎると定植後の生育が劣ることが明らかになっているが、定植後の生育が抑制されない摘葉時期については十分明らかとなっていない。そこで、摘葉の時期と定植後の生育、貯蔵養分、耐凍性について調査を行い、苗木定植後の生育に悪影響を及ぼさない摘葉の開始時期を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 2年生わい性台木苗木(カットツリー)の掘り上げ前の摘葉開始時期は、11月中旬とする。これより早い時期の摘葉は定植後の生育(新梢伸長、幹肥大)が劣り、場合によっては苗木が枯死する恐れがある。11月上旬の摘葉でも自然落葉期の摘葉と変わりない生育を示す場合もあるが(データ省略)、安全を見込めばより遅い時期が望ましい。11月中旬以降であれば、自然落葉期(12月上旬)とほぼ同等の生育が期待できる(図1)。
2. 掘り上げ前の摘葉時期が早いと、定植2年目の頂芽の花芽着生が劣る。11月中旬以降の摘葉であれば、頂芽の花芽着生は自然落葉期と同等である(データ省略)。
3. 苗木の貯蔵養分(根部のデンプン濃度)は、10月以降急激に上昇するが、11月中旬以降のデンプン濃度上昇は緩慢となる(図3)。地上部のデンプン濃度についても、根部とほぼ同様の推移を示す(図3)。しかし、摘葉時期が早いと貯蔵養分の蓄積が十分でなく、低温に遭遇した場合の耐凍性が劣る(表1)。また、貯蔵養分の蓄積と耐凍性は、品種と台木の組み合わせによって異なる(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 栽培地域、土壌条件、気象条件、年次、品種や台木等により、摘葉開始の適期は変動する可能性がある。可能であれば、自然落葉期に近い、より遅い時期の摘葉が望ましい。
2. 苗木掘り上げから定植までの間、根部の乾燥防止に努めると共に野そ対策を行う。
3. デンプン濃度はヨウ素デンプン反応を用いた簡易法による分析値である。アンスロン硫酸法とは分析値が異なる。

[具体的データ]

(伊藤 正)

 
[その他]
研究課題名:リンゴわい化栽培向け優良大苗の生産・規格検定・流通技術の開発
予算区分:実用技術
研究期間:2004〜2008年度
研究担当者:伊藤 正、小松正孝、小野剛史、臼田 彰

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