中晩生カンキツ「不知火」の「スイングルシトルメロ」台による増収効果


[要約]
中晩生カンキツ「不知火」の台木として「スイングルシトルメロ」を用いると、樹が大きくなるのが早く、1樹当たり収量も多い。果実は大玉果の比率がやや高く、糖、クエン酸がやや低い傾向がある。

[キーワード]不知火、台木、生育、収量、品質、スイングルシトルメロ

[担当]静岡農林技研果樹研セ・栽培育種科
[代表連絡先]電話:054-334-4853
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]

「不知火」は高品質な果実が生産されるが、カラタチ台では結実を開始すると樹勢が弱くなる特性がある。そこで、台木にわい性の「ヒリュウ」と強勢の「スイングルシトルメロ」を用い、「不知火」の安定生産に適した台木を選定する。


[成果の内容・特徴]
1. 「スイングルシトルメロ」ではカラタチに比べ樹幅が大きく、樹高には差がない。 7年生樹の樹容積は「ヒリュウ」がカラタチの1/2程度、「スイングルシトルメロ」が1.5倍程度となり、樹の大きさには違いがみられる(図1)。
2. 1樹当たり収量は多い順に「スイングルシトルメロ」、カラタチ、「ヒリュウ」となり、7年生までの累積収量には明らかな違いがある(表1)。
3. 階級別個数割合は 「スイングルシトルメロ」がカラタチ、「ヒリュウ」に比べ2L、3L程度の大玉果がやや多くなる傾向がある(図2)。
4. 果実品質は「スイングルシトルメロ」で糖度がやや低くなるが、クエン酸含量が低いため可食適期を迎えるのが早く、早期収穫や出荷が可能となる(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本成果は7年生樹までのデータであり、カラタチ台を基準とする慣行栽培によるものであり、「スイングルシトルメロ」を用いる場合は、施肥量や摘果程度などについて樹勢に応じて加減する必要がある。
2. 「スイングルシトルメロ」を台木として用いる場合は、台木育成のための種子の確保が必要である。
3. 本成果における「不知火」はウイルスフリー化後カンキツトリステザウイルス(CTV)弱毒系統M16Aを接種した穂木を用いた。

[具体的データ]
図1 台木の種類が「不知火」の樹高、平均樹幅、樹容積の年次推移に及ぼす影響
表1
図2 台木の種類が「不知火」の階級別個数割合(%)に及ぼす影響
表2

(中嶌輝子)

[その他]
研究課題名:作業性向上のための新品種栽培方法の開発
予算区分: 県単
研究期間:2003〜2010年度
研究担当者:中嶌輝子、馬場明子、佐々木俊之

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