光条件を改善するとブドウ果皮中のレスベラトロール含量が高まる


[要約]
果皮中のレスベラトロール高含有のブドウを生産するためには、成熟期に果実に照射される光量を増やす栽培管理が有効である。

[キーワード]ブドウ、レスベラトロール、果皮、果実袋、収穫時期、光

[担当]三重農研・伊賀農業研究室
[代表連絡先]電話:0595-37-0211
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
果実およびその加工品の需要を拡大するうえで、今後ますます機能性成分の活用が期待され、栽培環境や栽培方法等による機能性成分の賦与についても関心が高まると予想される。ブドウの果皮に特異的に含まれるレスベラトロールは抗酸化力に優れる。果皮中のレスベラトロール含量が高い果実を効率的に生産するために、果実に照射される光量を増やす栽培管理が有効と考えられることから、成熟期以降の果実袋の除去や白色反射マルチ処理および収穫時期による違いについて検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 「安芸クイーン」の果実下方からの光量子束密度が高い位置に結実した果実は、レスベラトロール含量が高い傾向を示す(図1)。
2. 白色果実袋の被覆により直射日光下の上方からの光量子束密度は1/4になり、マルチ処理では下方からの光量子束密度が直射日光下で6倍、樹冠下で5倍になる(データ略)。「マスカット・べーリーA」の果皮中のレスベラトロール含量は、収穫始期(9月20日)の収穫果より10月18日の収穫果、10月18日収穫果のうち有袋より除袋、10月18日収穫の白色反射マルチ+有袋よりマルチ+除袋がそれぞれ高い(図2)。
3. 果皮中のレスベラトロール含量は、「安芸クイーン」の収穫始期(8月10日)以降いずれの収穫日でも有袋より除袋の方が高く(図3左)、「巨峰」の除袋では収穫始期(8月10日)と比較して他の収穫日が高く、有袋では8月20日が他の収穫日より高い(図3右)。
4. 適着色以降の果皮の着色程度とレスベラトロール含量に相関関係は認められない(データ略)。

[成果の活用面・留意点]
1. 栽培条件とブドウ果皮中のレスベラトロール含量との関係が明らかになり、ジャム等果皮を供した加工品中のレスベラトロールの含量増加が期待できる。
2. 密植等の日照量が少ない条件では、除袋や収穫期を遅らせる等によるレスベラトロール強化の程度は小さい。なお、収穫期のマルチ処理は、品種や気象条件によって高温が原因と見られる生育障害をもたらすことがある。

[具体的データ]
図1 果実下方からの光量子束密度z と「安芸クイーン」果皮のレスベラトロール含量との関係(2006年) 図2 有袋と除袋、反射マルチ設置および収穫時期の違いが「マスカット・べー  リーA」の果皮中レスベラトロール含量に及ぼす影響x (2007年)
図3 有袋と除袋および収穫時期の違いが果皮中のレスベラトロール含量に及ぼす影響

(西川 豊)

[その他]
研究課題名:アグリビジネス化支援研究開発事業ほか
予算区分:県単
研究期間:2004〜2007年度
研究担当者:西川豊、冨森聰子、輪田健二、近藤宏哉
発表論文等:西川ら(2011)園学研.10(2)

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