お盆向けコギク新品種「小夏の月(仮称)」の育成


[要約]
コギク「小夏の月(仮称)」は草丈伸長性、草姿に優れるお盆向け黄色品種である。栽培が容易であり、開花調節技術を用いなくとも8月上中旬に開花する。

[キーワード]コギク、育種、新品種

[担当]群馬県農業技術センタ−・花き係
[代表連絡先]電話:0270-62-1021
[区分]関東東海北陸農業・花き
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
群馬県の8月咲きコギク栽培は露地栽培がほとんどであるため、気象の影響を受けやすく開花期が安定しにくい。また、既存品種の育成地は主に広島県と長野県であり、本県との気象条件が異なるため、カタログ上と実際の開花にずれが生じたり、開花時の草丈伸長が不十分となったりする等の課題がある。そこで、本県の気象条件に適合し、植物生長調整剤を用いずに安定して8月上中旬の需要期に出荷でき、花色、花形、草姿に優れる商品性の高い白色、黄色、赤色のコギクを育成する。

[成果の内容・特徴]
1. 2005年に草丈の伸長性に優れ、病害に比較的強い白色品種「ぎんせい」を種子親、草丈の伸長性や花形、草姿に優れる白色品種「こかげ」を花粉親として交配、採種した。翌年播種した中から花色、草姿、葉の形質等を重点に一次選抜を実施した。その後、2007年に二次選抜、2008年に現地適応性試験と特性調査を実施した。また、育成した系統の商品性評価のため、生産者と市場担当者に聞き取り調査を行い、2008年8月、その形質が安定していることを確認し、育成を完了した。
2.

(1)県内の概ね標高350m以下の地域において露地栽培での自然開花時期は、8月上中旬である(表1)。

(2)現地の主力品種である「つむぎ」、「翁丸」と比較し草丈の伸長性に優れる(表1)。

(3)茎の下部からの側枝の発生が少ないため、収穫調整時の作業性がよい(図1左)。

 花房の形は頂花のやや沈む円錐形であり、総花数が多い(表1 図1中)。

(4)花色は明黄色(日本園芸植物標準色票:明黄2506)、葉は濃い緑色である(図1右)。

(5)現地適応性試験における慣行栽培では病害の発生は少なく、栽培が容易である。


[成果の活用面・留意点]
1. 苗の配布は当面群馬県のみとする。(許諾料については現在は免除)
2. 栽培方法は、コギク一般品種に準ずる。
3. 栽培年の気象条件や施肥量によっては開花時期に変化が生ずるので地域の実情や気象条件に合わせて栽培する。
4. 生産現場における出荷適期は、開花日の3〜5日前である。
5. 本品種は2010年8月に登録された白色品種「小夏の風」につづく黄色品種であり、2009年12月に品種登録出願を行い2010年2月18日に公表された。

[具体的データ]
表1「小夏の月(仮称)」および対照品種の特性
表2 現地適応性試験における特性 (2008年)
図1 「小夏の月(仮称)」の草姿(左)、花房(中)、花形(右)

(村ア衣里)

[その他]
研究課題名:夏秋咲きコギクの品種育成
予算区分:県単
研究期間:2009〜2011年度
研究担当者:村ア衣里、堀口数子、島田景、高橋登、小林智彦(吾妻農業事務所)、渡邊康弘(蚕糸園芸課)、春山実(群馬県食産協)
発表論文等:島田ら(2011)群馬県農業技術センタ−研究報告第8号


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