夏秋ギクのヤガ科害虫防除におけるLED防除器の利用技術


[要約]
LED防除器を用いて2〜4lx 程度の終夜照明を行うことにより、夏秋ギクの開花にほとんど影響を与えずに、オオタバコガ等のヤガ科害虫による被害を低減することができる。また、LED防除器の電源として太陽電池を利用することもできる。

[キーワード]夏秋ギク、ヤガ科害虫、LED、害虫防除

[担当]長野野花試・花き部、環境部、長野南信試・栽培部
[代表連絡先]電話:026-278-6848
[区分]関東東海北陸農業・花き
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
本県のキクは、露地の季咲き作型を中心に栽培が行われているが、近年ではオオタバコガ等のヤガ科害虫による被害が拡大している。防蛾用に開発されたLED防除器は、均一性の高い照明ができ、軽量で耐久性が高く、消費電力が少ないなどの特徴を持つことから、LED防除器の照明とキクの生育・開花、防除効果との関係を明らかにし、キク栽培に利用するための技術を確立する。

[成果の内容・特徴]
1. 570nmをピーク波長とするLED防除器の照明は、10lx以上の照度では夏秋ギクの開 花を抑制するが、2lx程度の低い照度では開花に影響を及ぼさない(表1)。
2. このLED防除器は、9月咲き品種に対しては2〜4lxで終夜照明しても開花期や切 り花品質に及ぼす影響は小さいことから開花まで照明することができ、ヤガ科害虫によ る被害を低減することができる(表2)。8月咲き品種でも開花期、切り花品質への影 響は見られない(データ略)。
3. AC電源を用いて3m×3.3mに1灯を2.5mの高さに設置した時、草丈1mまでは、ほ 場内の照度を2〜4lx程度に保つことができる(データ略)。この間隔で10a当たり100 個を設置し、終夜照明を行うことで防除効果が得られる。
4. 電源のないほ場では、太陽電池(DC)を電源とし、バッテリー、タイマー、充放電コ ントローラーを設置することで終夜照明が可能になり、ヤガ科害虫による被害を低減す ることができる(表3)。太陽電池を用いる場合には、照度が15%程度低下することを考 慮して、間隔2.5m×2.4m、高さ2.5mで10a当たり160個程度設置する。

[成果の活用面・留意点]
1. 本成果で使用したLED防除器は「レピガード®」である。
2. 薬剤散布による防除は慣行どおり実施する。発生が少なく被害程度が小さい場合には 散布回数を減らす等の調節を行う。
3. 草丈が伸びると頂部付近の照度の差が大きくなるので、草丈が130cm以上になる場 合や生育に合わせて照度調節を行う場合には、パルス駆動付きの制御装置を用いて間隔 2.5m×2.4m、高さ2.5mで10a当たり160個程度設置する。
4. AC電源がある場合の試算では、設置間隔3m×3.3mで10a当たり100個を設置すると、 導入経費は約37万円、1年当たりの償却費は約4万6000円、電気料は約4000円となる。
5. 太陽電池を用いる場合は、10a当たり480W、バッテリー300Ah(長野市における試算) を使用すると、導入経費は約107万円、1年当たりの償却費は約12万6,000円となる。
6. 「神馬」では2〜4lx照明による生育開花への影響は見られないが、秋ギク型スプレーギクでは、2lx照明でも開花が3日以上遅延する品種があり、秋ギク系品種では注意 が必要である。

[具体的データ]

(由井秀紀)

[その他]
研究課題名:発光ダイオードを用いたキクの安定生産技術の開発
予算区分:県単プロジェクト
研究期間:2008〜2010年度
研究担当者:由井秀紀、豊嶋悟郎、神谷勝巳、伊原竜夫、中島由郎
発表論文等:1)豊嶋ら「害虫防除方法及び装置並びに同装置用LEDランプ」特許出願 2006-34870


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