切り花ハボタンのペーパーポットを利用した若苗定植による切り花品質の向上


[要約]
ペーパーポットで1週間育苗した切り花ハボタンの若苗を定植すると、初期生育が旺盛で切り花長が長くなるとともに小輪傾向となり、切り花品質が向上する。また、慣行の2倍に密植すると茎が細く、葉が小さくなり、切り花品質がさらに向上する。

[キーワード]切り花ハボタン、若苗定植、ペーパーポット、切り花品質

[担当]石川農研・育種栽培研究部・園芸栽培グループ
[代表連絡先]電話:076-257-6911
[区分]関東東海北陸農業・花き
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
切り花ハボタンは、正月の生け花に加えて、フラワーアレンジメントにも利用されるようになり需要が伸びている。この利用形態の拡大に伴い、より切り花長が長く、小輪のものが求められている。
 しかし、赤色主力品種の「初紅」は慣行のセル育苗では草丈が伸びにくく、大輪になりやすい等、市場の求める品質を確保するのは難しい。また、シードテープ等を利用して直播栽培すると切り花長は長くなるが、マルチ栽培ができないため雑草対策が課題となっている。
 そこで、直播に近い状態で定植でき、マルチの利用が可能なペーパーポットを利用した若苗定植法を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 若苗定植とは、慣行で定植する苗より早い段階で定植する栽培方法である。慣行のセル育苗では、根鉢が形成される前に定植することは難しいが、ペーパーポットで育苗すると、根鉢が形成される前の若苗でも用土が崩れず、容易に定植できる。
2. 播種から1週間で一次根がポット底部に達し、育苗期間が長くなるに従って二次根の発生が多くなる傾向がある(図1表1)。
3. 育苗期間が短い方が切り花長は長くなる。育苗期間1週間の子葉が展開した位の若苗を定植すると、初期生育が旺盛となり、直播栽培と同等の切り花長で小輪の切り花が得られる(図1表1)。
4. 慣行(株間12cm)の2倍に密植(株間6cm)すると、茎が細く、葉も小さくなり、切り花品質が向上する(図2)。
5. 若苗定植による切り花長の伸長効果は、露地栽培、ハウス栽培ともに見られるが、露地栽培のように切り花長が確保しにくい場合に効果が高い(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 若苗定植栽培は、慣行のセル育苗に比べて切り花品質が向上する。
2. 若苗定植は吸肥力が強く、慣行施肥量では結球しやすくなるため、基肥を減肥する必要がある。
3. 密植栽培では、1穴に2粒播き、2本立ちの苗を慣行の株間(株間12cm)で定植する方法もあり、定植作業の負担が軽減される。
4. 若苗はペーパーポットSM2406(日本甜菜製糖株式会社製、口径2cm×高さ3cm、406穴/枚)を使用、セル苗は200穴セルトレイを使用した。

[具体的データ]
図1 定植時の苗の様子(品種:「初紅」)
表1 育苗期間が定植時の苗質および切り花品質に及ぼす影響
図2 育苗方法と株間が切り花品質に及ぼす影響 図3 栽培方法が切り花長に及ぼす影響

(石川県農業総合研究センター)

 
[その他]
研究課題名:ニッチトップを目指した極小輪切り花の栽培技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2008〜2009年度
研究担当者:吉住隆司、藤田敏郎

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