外観品質に優れるオオバ新品種「ひたちあおば」の育成


[要約]
オオバ新品種「ひたちあおば」は葉形や鋸歯の形状が良く、外観品質に優れる。選抜系統「北浦No.1」より草丈が低く節数はやや少ないが、有効茎数はやや多い。また、「北浦No.1」より抽苔しにくい。

[キーワード]オオバ、新品種、外観品質、抽苔

[担当]茨城農総セ・生物工学研究所・野菜育種研究室、園芸研究所・野菜研究室
[代表連絡先]電話:0299-45-8330
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
茨城県のオオバは、行方市を中心として周年栽培が行われているが、現地では品種・系統が統一されていないため、品質のバラツキが大きいことが問題となっている。そこで、本県に適し、葉形が良く、香りが強い等の品質に優れる品種を育成する。

[成果の内容・特徴]
1. 「ひたちあおば」は、2003年に「青シソ-3」(長野県産)と「芳香青しそ」(福岡県産)を交配し、選抜、固定を進めた品種である(図1)。
2. 「ひたちあおば」の葉形は、整ったハート形で表面の光沢が強く、鋸歯がやや深く、小鋸歯発生頻度が高い等、外観品質に優れる(図1表1)。
3. 「ひたちあおば」は、現地で栽培されている選抜系統「北浦No.1」と比較すると、草丈はやや低く、節数はやや少ないが、有効茎数(収穫可能な葉を付ける茎の数)はやや多い(表2)。
4. 「ひたちあおば」の冬作における抽苔はやや発生しやすいが、「北浦No.1」より発生しにくい(表2)。
5. 「ひたちあおば」を現地で試験栽培している生産者へのアンケート調査では、それぞれの生産者が栽培している「現地在来系統」と比較すると、形状、香りが良く、苦みは弱く、品質の評価が高い。収量は「現地在来系統」に比べてやや少ないが、問題にはならない程度であり、総合評価では有望という評価である(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 「ひたちあおば」は、草勢が低下すると収量が減少するので、強度の摘葉を避け、草勢を維持する必要がある。
2. マルチ被覆することで、初期生育が促進され収量が向上するとともに、ハウス内湿度が低下し、病害発生を抑えられる。
3. 冬作では抽苔しやすいので電照を行うとともに、施設内の気密性を高め、保温に努める。
4. 種子生産は、行方地域園芸振興協議会で行う。当面、茨城県内での普及を図る。

[具体的データ]
図1 オオバ「ひたちあおば」の育成経過及び葉の外観
表1 オオバ「ひたちあおば」の葉の形状(2006年)
表2 オオバ「ひたちあおば」の現地適応性試験結果(2006年)
表3 オオバ「ひたちあおば」生産者の評価(2008年夏作)

(寺門巌)

[その他]
研究課題名:野菜新品種育成および地域適応性試験
予算区分: 県単
研究期間:2003〜2009年度
研究担当者:寺門巌、山邉あずさ、坂井佳代子、氏家有美、宮城慎
発表論文等:品種登録出願公表(2010年4月22日)−出願番号第24483号

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