積算温度を用いたトマトの生育予測による作付組合せ手法の開発
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[要約] |
施設トマト栽培において、生育段階別の所要日数を積算温度により標準化すれば、施設の立地や作付時期にかかわらず一定の生育予測が可能となり、任意作型における栽培期間の推定・予測に基づく作付け組合せ体系を構築できる。 |
[キーワード]トマト、積算温度、生育予測、作付組合せ |

[担当]神奈川農技セ・野菜作物研究部・野菜担当
[代表連絡先]電話:0463-58-0333
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・普及 |
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[背景・ねらい] |
施設トマト生産の持続的発展にむけて求められる周年安定多収栽培体系にとって、夏期でも安定して収量が得られるという低段密植栽培の特性は重要である。一方、低段密植栽培を基にして周年栽培体系を組み立てるためには、任意の作型におけるトマトの栽培期間を適切に予測できる必要がある。そこで、トマトの生育段階別の所要日数を積算温度により標準化する生育予測法(北1987)を任意作型における栽培期間の推定・予測に適用することによって、施設トマトにおける作付け組合せ体系を構築するための手法を開発する。 |
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[成果の内容・特徴] |
1. |
トマトの生育予測には、生育段階別の所要日数を積算温度(℃日)により標準化する生育予測法を適用する。すなわち、トマトを数年次、異なる作型で通算10作程度栽培し、トマトの主要な生育段階別に、その始めから終わりまでに要する積算温度の平均値を算出する。次に、この積算温度を当該生育期間の平均気温(℃)で除せば、当該生育段階を完了するまでに必要な日数(日)が算出できる。 |
2. |
栽培途中においては、当該生育段階の積算温度値から当日までの各日平均気温(℃日)の累積値を減じた積算温度値を算出し、これをその後の推定平均気温で除せば、生育終了までに要する残りの日数を予測できる。日平均気温は、施設栽培では当該施設の複数年にわたる温度制御実測値から算出した値の平均値を用いる。 |
3. |
これまでの施設内平均気温の実測値を用い、既存のトマト各生育段階別の積算温度値(北1987)を参照して各生育段階別の積算温度を算出すると、播種後610℃日で閉鎖型育苗施設を出庫、その後400℃日で第1段果房が開花、以後210℃日ごとに次段の第1花が順次開花し、開花後1,100℃日で着色して収穫開始を迎える。また、各花房に4果着果したとすると、1果目の収穫開始から4果目の収穫終了までには420℃日を要することが明らかになった(表1)。各生育段階別の積算温度を標準的な季節別平均気温で除して、時期別の生育所要日を収穫段数に応じて算出する(表1)。第1花房開花から任意の花房段位(n)の収穫終了までに要する積算温度(cTn)の算出式は、次式の通りである。
cTn=1,100+210×(n-1)+420 |
4. |
この手法を任意作型で検証栽培すると、夏作の一部を除き、7〜10日程度の誤差範囲でほぼ予測どおりの期間で作付けできる(表2)。 |
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[成果の活用面・留意点] |
1. |
日平均気温は立地や施設の種類(ガラス温室かプラスチックフィルムか等)の影響を、また、各生育段階までに要する生育日数は品種の早晩性の影響をうけるので、予測した生育所要日数と実際の所要日数との間には7〜10日(積算温度で150〜200℃日)程度の誤差が生ずる。 |
2. |
日射量が比較的少ない冬春期は、日積算温度を増加させるのみの温度管理では生育が栄養生長に偏りやすいので、注意する。 |
3. |
トマトの生育段階別の所要日数を積算温度により標準化する生育予測法については、北宜裕. 1987.トマト半促成栽培における生長解析.神奈川園試研報 34:22-26.を参照する。 |
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[具体的データ] |
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(廣瀬一郎)
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[その他] |
研究課題名:低段多段組合せ栽培によるトマト安定多収栽培体系の開発と実証
予算区分:実用技術
研究期間:2008〜2009年度 研究担当者:北宜裕、廣瀬一郎、保谷明江、北浦健生、丸尾達(千葉大院)
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