炭疽病抵抗性を持つ極早生性イチゴ新品種「かおり野」


[要約]
イチゴ新品種「かおり野」は炭疽病抵抗性を持ち、普通促成栽培で11月下旬から収穫が可能な極早生品種である。生育が旺盛で収量が多い上、果実が大きく、高糖度かつ低酸度の良食味を持つ。

[キーワード]イチゴ、品種、炭疽病抵抗性、極早生

[担当]三重農研・園芸研究課
[代表連絡先]電話:0598-42-6358
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
イチゴ炭疽病は深刻な被害を引き起こす重大病害であるが、既存品種には抵抗性を持つものは極めて少なく、根本的な対策には抵抗性品種の開発が必要である。さらに、生産者の収益性向上のため、イチゴの販売単価が高い年内に収穫量が多い極早生品種が強く求められている。そこで、炭疽病抵抗性を持ち、高品質な極早生性イチゴ品種を育成する。

[成果の内容・特徴]
1. 「かおり野」は、「女峰」、「愛ベリー」、「とよのか」、「宝交早生」、「章姫」、「あかしゃのみつこ」、「とちおとめ」および「サンチーゴ」の8品種を基に炭疽病抵抗性選抜と系統間交配を繰り返して育成した系統同士(系統0028401×系統0023001)を2003 年に交配して得られた実生集団から選抜された促成栽培用品種である(図1)。
2. 炭疽病抵抗性品種「サンチーゴ」と同等の強度の炭疽病抵抗性を持つ。萎黄病抵抗性は「章姫」より弱い(表1)。
3. 頂花房の花芽分化時期は9月10日前後で、収穫開始時期は早生性の強い品種である「章姫」よりも早い。年内収量および総収量は「章姫」および「サンチーゴ」より多い(表2)。
4. 果形は円錐形で、果皮色は明るい橙赤色である。平均果重は「章姫」よりやや大きい。高糖度、低酸度で糖酸比は「章姫」、「サンチーゴ」より高い上、爽やかな香りを有し、良食味である。果実硬度は「章姫」より高い(表2)。
5. 草姿は立性で、生育が極めて旺盛であり、葉の大きさおよび葉柄の長さは「章姫」、「サンチーゴ」より大きい(表3)。葉色は黄緑色で「章姫」、「サンチーゴ」より淡い。連続出蕾性および低温伸長性は優れている。

[成果の活用面・留意点]
1. 栽培には三重県との許諾契約が必要である。
2. 本品種の炭疽病抵抗性は炭疽病菌Glomerella cingulataに対するものであり、炭疽病菌Colletotrichum acutatumでは未検討である。
3. 育苗中に水分および肥料不足を生じやすく、ランナー発生数の減少や生育不良になることがあるので、多灌水を行うとともに肥料切れに注意する。
4. 定植後の生育が旺盛すぎると頂果房および第1次腋果房の第1果に乱形果が発生する場合がある。
5. 萎黄病に対する抵抗性は弱いので、健全苗を用い汚染圃場での栽培を避ける。
6. 灰色かび病の発生が多い。特に高設栽培で多く、薬剤散布に加えて換気、廃液回収等の耕種的対策を行う必要がある。

[具体的データ]
図1「かおり野」の育成経過と果実および草姿の写真

(北村八祥)

[その他]
研究課題名:植物遺伝資源の収集保存と特産園芸品種の開発
予算区分:県単 
研究期間:2002〜2008年度 
研究担当者:北村八祥、森 利樹
発表論文等:森ら「かおり野」品種登録 2010年5月10日(第19529号)

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