低段・多段組合せ栽培によるトマト周年多収養液栽培体系の実証


[要約]
積算温度を用いたトマトの生育予測法に基づいて、低段密植栽培と長期多段どり栽培を組み合わせることにより、トマトの養液栽培体系において、周年収穫と10a当たり年間40t以上の多収が達成できる。

[キーワード]トマト、養液栽培、低段密植、長期多段どり、生育予測、作型組合せ

[担当]神奈川農技セ・野菜作物研究部・野菜担当
[代表連絡先]電話:0463-58-0333
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
施設トマト経営の持続的発展にむけて、周年安定多収技術の開発が望まれている。そこで、積算温度を用いた生育予測を用いて、夏期でも安定した収量を得られる養液栽培による低段密植栽培と冬春期に多収となる長期多段どり栽培を組み合わせた周年多収栽培体系を構築し、周年収穫・年間総収量50t/10aを目指す。このトマト養液栽培における低段・多段組合せ栽培体系について、実証試験によりその有効性を検証する。

[成果の内容・特徴]
1. 積算温度を用いたトマトの生育予測による作付組合せ手法を用いて、低段密植栽培と長期多段どり栽培の組合せを構築すると、周年収穫のためには作付けスケジュールの異なる区が3以上必要である。このことに基づき組み立てたトマト養液栽培の低段・多段組合せ周年安定多収栽培体系は、栽培期間・収穫期間とも、ほぼ計画通り周年継続させることができる(図1)。なお、生育状況に応じた計画修正には、前作終了前に次作を定植するインタープランティングを実施する。
2. 積算温度を用いて各果房の収穫時期を予測できるので、収量構成要素を積算し、月ごとの総収量を予測することができる。月ごとの総収量は、実績では0.4〜5.9t/10a/月の変動を示すが、各作付の作型に最適な品種を採用することにより、変動幅は計画の0.9〜4.9t/10a/月に抑えられる(図1)。
3. 年間収量は、実証試験の6月〜5月の1年で見た場合、計画総収量44t/10a/年に対して、実績総収量は42t/10a/年(計画対比96%)であり、目標の50t/10a/年に対し80%以上を確保できる(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 実用に当たっては、低段密植栽培と長期多段どり栽培の組合せパターンを個々の施設の年間気温推移を元にして再計算し、経営内容に最適化した体系を組み立てる。
2. 各作付には、その作型に適した品種を選択する。
3. 具体的なモデル栽培体系例については、(社)日本施設園芸協会で公開している「低段・多段組合せ栽培によるトマトの周年多収生産技術マニュアル」(http://www.jgha.com/tomato-teidantadan.pdf)を参照する。
4. 極端な気候変動により、生育障害が顕著となった場合は、目標とする生育・収量が確保できないことがある。

[具体的データ]

(廣瀬一郎)

[その他]
研究課題名:低段多段組合せ栽培によるトマト安定多収栽培体系の開発と実証
予算区分:実用技術
研究期間:2008〜2009年度
研究担当者:廣瀬一郎、北宜裕、北浦健生、保谷明江、丸尾達(千葉大院

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