改良型高圧細霧冷房装置は細霧冷房よりも温室内が濡れにくい


[要約]
従来の細霧冷房よりも粒子径が20μm以下と小さい改良型高圧細霧冷房装置は、温室内の気温を日中最大6℃程度降下させ、その降温効果は飽差が大きいほど高い。また、細霧冷房と比較し温室内が濡れにくい特徴がある。

[キーワード]改良型高圧細霧冷房装置(ドライミスト®)、高温対策、温室、飽差、トマト

[担当]静岡農林研・野菜科
[代表連絡先]電話:0538-36-1555
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
トマトやバラの施設園芸では、夏季の高温により品質や収量が低下する。温室の日中の降温対策として、細霧冷房装置が利用されているが、使用条件によっては作物に濡れを生じることがある。近年より細かな粒子を散布する改良型高圧細霧冷房装置(ドライミスト®)が開発され、蒸発特性に優れる可能性があるので、その特徴について明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 改良型高圧細霧冷房装置は、噴霧された霧のザウター平均粒径(Σx3/Σx2xは粒径)が20μm以下と小さく、噴霧圧が6.5MPaと高い(従来の細霧冷房装置は粒径が約40μmで、噴霧圧は1.5Mpa)。
2. 密閉状態の温室内(面積115.2m2 間口6.4m×奥行18m)に感水紙(52mm×38mm)を1m間隔で98箇所設置し、改良型高圧細霧冷房装置、細霧冷房とも32.2mL/m2散布した後感水紙を回収、画像解析して感水紙の被覆面積率を求めることで、温室内の濡れの分布状態を測定した結果から、改良型高圧細霧冷房装置は、細霧冷房によりも温室内が濡れにくく、濡れのバラツキが少ない(図1)。
3. 改良型高圧細霧冷房装置(噴霧量1.4L/min/100m2、気温30℃以上、相対湿度70%以下で運転)を設置し、夏期にトマトを養液栽培した温室内の日中平均気温(9時〜15時)は、無設置の室温と比較して最大6℃程度気温を下げることができる(図2)。
4. 改良型高圧細霧冷房装置の降温効果は、対照温室の空気中の飽差との負の相関が高く (r=-0.84)、飽差が大きいと降温効果が高い(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 改良型高圧細霧冷房装置(ドライミスト®)は、施設園芸用に開発途中である。
2. 霧の粒子径は、メーカー測定値である。
3. ノズルのつまりを防ぐために、上水道を使用する必要がある。
4. ドライミスト®は、能美防災株式会社の登録商標である。

[具体的データ]
図1改良型高圧細霧冷房装置および細霧冷房装置で115m2の密閉温室内に32.2mL/m2散水後の感水
図2 改良型高圧細霧冷房装置による降温効果(9時〜15時平均値、2010年7月〜9月)
図3 改良型高圧細霧冷房装置による降温効果と対照温室飽差との関係(2010年7月〜9月)

(佐藤展之、大石直記)

[その他]
研究課題名:施設園芸における高度環境制御による高生産システムの確立
予算区分:実用化事業
研究期間:2007〜2010年度
研究担当者:佐藤展之、大石直記

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