冬季温暖地域での無加温ハウス育苗と2月定植による業務用タマネギ安定生産


[要約]
冬季温暖な愛知県東三河地域では、タマネギ品種「ネオアース」、「さつき」、「もみじ3号」を10月下旬に無加温ハウス内に播種し、2月中旬に2,222株/aの栽植密度で露地ほ場へ定植することで、大玉で乾物率が高い業務用タマネギを安定生産できる。

[キーワード]冬季温暖地域、無加温ハウス育苗、業務用タマネギ、2月定植、作付体系

[担当]愛知農総試・東三河農業研究所・野菜グループ
[代表連絡先]電話:0532-61-6235
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
愛知県東三河地域では、栽培が盛んな夏まきキャベツとの組み合わせの有利な作目が求められている。慣行のタマネギは、9月下旬に播種し、11月下旬〜12月上旬に定植するため、組み合わせ可能なキャベツの作型は夏まき10月下旬〜11月上旬どりに限定される。そこで、慣行タマネギ作型との労力分散ができ、10月下旬〜1月下旬どりの夏まきキャベツ作型にも組み合わせられる2月定植による業務用タマネギの安定生産技術を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 冬季温暖な地域において、10月下旬に無加温ハウス内へ播種し、2月中旬に露地ほ場へ定植する本栽培法は、慣行タマネギ作型と播種・定植・収穫労力が分散でき、10月下旬〜1月下旬どりの夏まきキャベツ作型にも組み合わせることができる(図1)。
2. 無加温ハウス内で育苗することにより、露地で育苗するよりも短期間で、生葉数が多く、葉長が長く、かつ、葉鞘径も太い苗を育成できる(図2)。
3. 6月上旬までに収穫する慣行タマネギ作型と収穫労力の分散が可能で、可販球率が高く、大玉で乾物率が高い業務用適性を有する2月定植向き品種は、「ネオアース」、「さつき」、「もみじ3号」である(表1)。
4. 2L球割合は、2,778株/a(うね幅120cm、株間12cm、4条植え)では3品種とも25〜40%であるが、2,222株/a(うね幅120cm、株間15cm、4条植え)では「ネオアース」が76%、「さつき」が53%、「もみじ3号」が57%と高くなる(図3)。1,852株/a(うね幅120cm、株間18cm、4条植え)では、3品種ともさらに80%程度に高まるが(図3)、単位面積当たりの可販球収量は低下するため(データ略)、2Lの大玉が求められる業務用需要では、2,222株/aの栽植密度が適する。

[成果の活用面・留意点]
1. 本成果は、無マルチ栽培で得られたものである。
2. 本栽培法は、降霜が少ない冬季温暖な地域で活用できる。
3. 夏まきキャベツ栽培の育苗で使用する無加温ハウスを有効利用できる。
4. 本栽培法による収穫時期は6月下旬〜7月上旬になるため、タマネギ後作が水稲の地域での導入は難しいが、キャベツと同様な夏まき作目の地域では導入に支障はなく、効率的な作付体系を構築できる。

[具体的データ]
図1 2月定植の業務用タマネギと夏まきキャベツを組み合わせた作付体系
図2 無加温ハウス育苗と露地育苗における苗の生育比較 表1  2月定植における供試20品種の特性

(大川浩司)

図3 2月定植における栽植密度が可販球の規格別割合に及ぼす影響
[その他]
研究課題名:業務用需要に対応した露地野菜の低コスト・安定生産技術の開発
予算区分:実用技術
研究期間:2008〜2010年度
研究担当者:大川浩司、相川豊孝、三浦広夫

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