砂丘地における秋どりダイコンの局所施肥による減肥栽培技術


[要約]
砂丘地における秋どりダイコン栽培では、肥効調節型肥料を用いた局所施肥によって窒素の肥料利用率が向上するため、全層施肥に対し減肥が可能となる。葉重および窒素吸収量は、3割以上の減肥で減少するが、根重は5割減肥しても全層施肥と同等である。

[キーワード]砂土、秋どりダイコン、局所施肥、肥効調節型肥料、肥料利用率

[担当]石川農総研・砂丘地農業試験場
[代表連絡先]電話:076-283-0073
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
砂丘地における秋どりダイコン栽培では、砂土の保水・保肥力が低いことから、壌土・粘質土地帯に比べ多肥である。このため、肥料養分の溶脱による環境負荷が懸念されるとともに、生産費の低減が求められている。そこで、肥効調節型肥料と局所施肥の組み合わせによる減肥が秋どりダイコンの収量・品質に及ぼす影響を検討し、減肥栽培技術の開発に資する。

[成果の内容・特徴]
1. 供試肥料は、被覆尿素リニア70日タイプと重焼リン、硫酸加里の混合品を用い、全量基肥栽培とする。局所施肥区では、専用のうね立て同時施肥機を用いて肥料をうね天面から20cmの深さに条施用する(表1)。
2. 根重は、局所3割減肥区および5割減肥区ともに対照区と同等となる。一方、葉重は局所5割減肥区で有意に小さくなる(表2)。
3. いずれの試験区でも根身部の岐根は認められない。一方、局所施肥区では根端部(根径が2cm未満となる部位)の岐根が対照区よりも増加するが、程度は軽微であり、根端部を切除する出荷形態では問題とならない (表2図1)。
4. 窒素吸収量は、局所3割減肥区で対照区と同等となり、同5割減肥区で1.6kg/10a減少する。一方、みかけの窒素肥料利用率は局所3割減肥区で対照区の1.4倍、同5割減肥区で1.7倍に向上する ((表2)。
5. 葉色(SPAD値)は、局所3割減肥区で生育期間を通じて対照区よりも高く推移する。一方、局所5割減肥区では、播種後45日目頃まで対照区よりも高く、収穫期には対照区と同等となる(図2)。
6. 以上より、砂丘地では被覆尿素肥料を用いた局所施肥で肥料利用率が向上するため、減肥栽培が可能となり、環境負荷が軽減できる。

[成果の活用面・留意点]
1. 供試した局所施肥機は(独)農研機構・中央農研・北陸研究センターで開発された試作機で、施肥・うね立て・播種の一貫作業による省力化が期待できる。
2. 被覆尿素肥料の溶出特性は気象条件(地温)の影響を受けるため、生育後半に葉色の低下が著しい場合は、適宜追肥が必要である。
3. 本技術は、出荷調整時に根端部を残す出荷形態では適用できない。

[具体的データ]

(石川県農業総合研究センター)

 
[その他]
  • 研究課題名:ダイコン・サツマイモの肥料コスト低減技術研究
    予算区分:委託
    研究期間:2009〜2010年度
    研究担当者:梅本英之、池下洋一、石端一男

目次へ戻る