燃料消費量を削減できるトマト生長点局所加温技術
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[要約] |
温風ダクトをトマト群落上に吊り下げ、生長点・開花花房付近に温風が直接当たるように加温を行う。本方式では施設内を均一に加温する慣行法と比較して、収量の低下を招くことなく燃料消費量の削減が可能となる。 |
[キーワード]トマト、省エネ、生長点、局所加温、温風ダクト、垂直温度分布 |

[担当]野菜茶研・高収益施設野菜研究チーム
[代表連絡先]電話:0569-72-1166
[区分]野菜茶業・野菜栽培生理、関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・参考 |
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[背景・ねらい] |
近年起こった原油価格の高騰や、二酸化炭素排出量削減への対応のため、施設園芸分野における省エネルギー対策は喫緊の課題である。冬季の暖房は施設内を均一に加温するのが一般的であるが、施設生産において低温で障害が発生しやすい器官は茎頂の生長点や花芽などの分裂組織であり、生長した茎葉や肥大期の果実は低温下でも比較的障害が発生しにくい。そこで、茎頂の生長点・開花花房付近(以下、生長点とする)を局所的に加温し、低温障害を回避するとともに、群落下部の加温を抑えることで燃料消費量の削減を図る。 |
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[成果の内容・特徴] |
1. |
生長点局所加温は市販の温風暖房機、ポリダクトを用い、通常地面上に配置する温風ダクトを群落上に吊り下げることで行う(図1)。温風ダクトには直径1p程度の穴を水平方向に複数開け、温風が生長点に直接当たるようにする。温風ダクトから出る温風の温度は、暖房機から離れるに従い低くなるため、温風ダクトに開ける穴の間隔は暖房機近くでは広く、遠くなるほど狭くして遠方の風量を増加させる。暖房機の制御用温度センサーもトマト群落内で温風が当たる高さに設置する。 |
2. |
慣行と比較して、夜間の気温および植物体表面温度は生長点では高温となり、逆に下部では低温となる(図2、3)。 |
3. |
試験期間中において、燃料消費量は慣行比で26.2%の減少となり、燃料費にしておよそ13万円/10aの削減となる(表1)。 |
4. |
収量に関しては慣行と比較して同程度かそれ以上を確保できる(表1)。 |
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[成果の活用面・留意点] |
1. |
温風ダクトは各列に吊り下げる必要があり、慣行より多くのダクトを必要とするが、それ以外に新たな設備・資材の導入は必要ないため、低い初期投資で実施が可能である。 |
2. |
群落下部が低温で保たれるため、地温も同様に低下する恐れがある。暖房機の設定温度を低温にする場合には根域の保温対策が必要である。 |
3. |
本技術はつる下ろし誘引栽培などの、生長点が一定の高さの範囲で保たれる誘引法に適用できる。 |
4. |
試験は愛知県武豊町の温室(面積972m2、軒高3.6m、誘引高さ約2.9m)を2重カーテンで東西に区切り、暖房機の設定温度を13℃として一方を生長点局所加温、もう一方を慣行加温(温度センサーは群落内1.5m高さに設置)として、両区ともロックウール養液栽培、つる下ろし誘引にて実施したものである。供試品種は「桃太郎ヨーク」および「ビットリオ」である。 |
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[具体的データ] |
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[その他] |
研究課題名:トマトを中心とした高収益施設生産のための多収、低コスト及び省力化技術の開発
中課題整理番号:213a
予算区分:基盤、委託プロ(加工)
研究期間:2009〜2010年度
研究担当者:河崎靖、鈴木克己、安場健一郎、高市益行
発表論文等:河崎ら(2010)園学研9(3):345-350
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