海洋深層水を利用した野菜水煮の劣化抑制技術


[要約]
海洋深層水を利用することにより、野菜の水煮製造時に発生する「軟化」、「表面のヌメリ」および「表面のほつれ」等の品質劣化を抑制することができる。

[キーワード]海洋深層水、サトイモ、フキ、ダイズ、ゼンマイ、水煮、軟化、ヌメリ、ほつれ

[担当]富山農総技食研・食品化学課
[代表連絡先]電話:076-429-5400
[区分]関東東海北陸農業・流通加工
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
野菜水煮は長期保存可能で利用の際の簡便性から、多くの種類の野菜が水煮に加工されている。しかし、製品の長期保存のために行う加熱殺菌工程で野菜の軟化、外観が劣化する等の品質低下が生じ、問題となっている。
  そこで、サトイモ、フキ、ダイズおよびゼンマイの水煮について、様々なミネラルを含有する海洋深層水を用い、その種類と濃度および加熱殺菌条件(温度、時間)等を検討することにより、これらの問題を解決した良好な製品を製造する技術を確立する。

[成果の内容・特徴]
1. サトイモの水煮については、剥皮したサトイモを海洋深層水原水に5℃で1晩(約17時間)浸漬し、水切り後に120℃30分加熱殺菌することでサトイモ水煮の軟化が抑制できる(図1)。
2. フキ水煮については、使用する充填液にミネラル脱塩水(海洋深層水から過剰な塩分を除去したもの)を用い、90℃1時間加熱殺菌することで軟化が抑制できる(図2)。
3. ダイズ水煮については、使用する充填液に海洋深層水の2倍希釈水を用い120℃20分加熱殺菌することで多糖類やたんぱく質の溶出が抑制され、ダイズ表面のヌメリがなく外観が良好となる(図3)。
4. ゼンマイ水煮については、使用する充填液にミネラル脱塩水を用い90℃1時間加熱殺菌することで表面にほつれが見られず、外観が良好となる(図4)。

[成果の活用面・留意点]
1. 海洋深層水を活用した本技術は他の野菜にも応用が期待できる。
2. サトイモ、ダイズ及びゼンマイの水煮については既に商品化がなされている。
3. ミネラル脱塩水は電気透析法により海洋深層水から塩化ナトリウムを選択的に除去したものである。
・海洋深層水
 (ナトリウム 10,800ppm、塩素 19,300ppm、マグネシウム 1,300ppm、カルシウム 410ppm)
・ミネラル脱塩水
 (ナトリウム 690ppm、塩素 4,100ppm、マグネシウム1,080ppm、カルシウム290ppm)

[具体的データ]
図1 加熱殺菌したサトイモの破断荷重 図2 加熱殺菌したフキの破断荷重
図3 加熱殺菌したダイズの外観
図4 加熱殺菌したゼンマイの外観

(加藤肇一)

[その他]
研究課題名:非水産分野深層水利用研究
予算区分:県単
研究期間:2005~2009年度
研究担当者:加藤肇一
発表論文等:加藤ら(2007) 海洋深層水研究、8(1)、1-6

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