電気穿孔処理による中島菜に含まれるACE活性阻害能の向上技術


[要約]
中島菜を印可電圧3000V/cm、パルス回数30回の条件で電気穿孔処理することにより、形状維持した状態でアンジオテンシンⅠ変換酵素(ACE)活性阻害能を向上させることができる。さらに、電気穿孔処理した中島菜を加熱するとACE活性阻害能がより向上する。

[キーワード]中島菜、3000V/cm、30回、電気穿孔、形状維持、ACE活性阻害能、加熱

[担当]石川農研・流通加工グループ
[代表連絡先]電話:076-257-6978
[区分]関東東海北陸農業・流通加工
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
中島菜は石川県七尾市中島地区を中心に能登地方で栽培されているアブラナ科野菜である。血圧上昇に作用するアンジオテンシンI変換酵素(ACE)活性阻害能が高いことから、加工原料としての利用が拡大している。これまでに、中島菜をペースト化して加熱することによりACE活性阻害能が向上する事を明らかにしたが、中島菜の形が残らないことが問題となる。そこで、通電処理技術を利用し、中島菜の形状を残した状態でACE活性阻害能を向上させる技術について検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 中島菜を5cm幅以内に切断し、直流電流をパルス状に通電する電気穿孔処理を行うことにより、ACE活性阻害能が向上する。さらに、電気穿孔処理したのち加熱することにより、ACE活性阻害能がより向上する(図1)。
2. 電気穿孔処理による中島菜香気成分3-butenyl isothiocyanateの成分量の増加程度を指標とした最適処理条件は、印可電圧3000V/電極間1cm、パルス回数30回である(図2)。この最適処理条件は、同様に切断した中島菜のACE活性阻害能でも確認される(データ省略)。
3. 中島菜の切断幅を変えても、印可電圧3000V/電極間1cm、パルス回数30回の電気穿孔処理でACE活性阻害能がおおむね最大となる(図4)。

[成果の活用面・留意点]
1. ACE活性阻害能を高めた中島菜を食品に添加することで、より付加価値の高い商品開発が可能となる。
2. 電気穿孔処理した中島菜を加熱する手段としては温湯加熱、通電加熱等が利用できる。
3. 細かく刻んだ中島菜は切断面の面積が大きいため電気穿孔処理後の溶出物が増加し、印可電圧の不安定化の原因となる。そのため、できるだけ多い量で効率的に電気穿孔処理を行うには、処理時の中島菜の形状は大きいほうが望ましい。
4. 現在市販されている電気穿孔処理装置は、細胞融合用の小規模なものしかなく、使用できる処理槽は5cm×5cm×1cmのものが限度である。
5. 中島菜の中に含まれるACE活性阻害能を有する成分については、同定に向けた検討を進めているところである。

[具体的データ]
図1 電気穿孔処理および加熱処理が中島菜ACE活性阻害能に及ぼす影響 図2 電気穿孔処理時の印可電圧の違いによる中島菜香気成分の変化
図3 電気穿孔処理時のパルス回数の違いによる中島菜香気成分の変化 図4 電気穿孔処理時のパルス回数が切断幅の異なる中島菜葉柄部のACE活性阻害能に及ぼす影響

(石川県農業総合研究センター)

[その他]
研究課題名:通電処理により中島菜の原形を残しつつ血圧上昇抑制効果を強化した食品素材の開発
予算区分:実用事業
研究期間:2009~2011年度
研究担当者:山田幸信、中村恵美、三輪章志、野口明徳(石川県大)、石田信昭(石川県大)

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