酒米100gで実施可能な大吟醸酒用簡易醸造試験法


[要約]
一般的な大吟醸酒用醸造試験法と同等の酒質の大吟醸酒を、酒米100gで簡易に醸造するには、麹を糖化する工程である水麹と蒸米を加える工程である添の二段階にわけて加水し、水麹温度を20℃、発酵温度を10℃一定にするとよい。

[キーワード]酒米100g、大吟醸酒、簡易、醸造、二段階、加水、温度、一定

[担当]石川農研・資源加工研究部・流通加工グループ
[代表連絡先]電話:076-257-6978
[区分]関東東海北陸農業・流通加工
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
酒米の醸造特性を評価するために一般的に行われている醸造試験法は、仕込作業や温度管理が煩雑である。そこで、100gの酒米で簡易に実施可能で、一般的な大吟醸酒用醸造試験法と同等な酒質の大吟醸酒を得るための大吟醸酒用簡易醸造試験法の開発を行う。

[成果の内容・特徴]
1. 開発した大吟醸酒用簡易醸造試験法では、麹を糖化する工程である水麹において麹米20g、水30ml、乳酸0.03mlを加え20℃で24時間培養し、蒸米を加える工程である添において掛米80g、水100mlを加えたのち、10℃で発酵を行う(表1)。
2. 一般的な大吟醸酒用醸造試験法では水麹、添、仲、留の4回に分けて掛米、麹米、水を加えるのに対し、開発した大吟醸酒用簡易醸造試験法では水麹と添の2回だけで良く、発酵温度も10℃一定であることから、仕込作業や温度管理が簡易である(表1)。
3. 発酵終了までの期間は、一般的な大吟醸酒用醸造試験法が平均30日であるのに対し、開発した大吟醸酒用簡易醸造試験法が平均47日と長い(表1)。
4. 大吟醸酒用簡易醸造試験法で醸造した清酒の一般成分値は、一般的な大吟醸酒用醸造試験法とほぼ同等の値となる(表2)。
5. 酸度日本酒度分布表を用いて醸造した清酒の酒質を分類すると、開発した大吟醸酒用簡易醸造試験法は、一般的な大吟醸酒用醸造試験法や市販大吟醸酒(純米)に近い酒質が得られる(図1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 開発した醸造試験法は、少量の酒米で簡易に実施可能なため、一度により多くの検体を用いて醸造試験を行うことができる。また、酒米の選抜過程に適用することにより、より多くの育成系統で総合的な醸造特性の判断を行うことができる。
2. 一般的な大吟醸酒用醸造試験法よりも発酵期間が20日程度長くなる。発酵期間を短縮するための条件の検討が必要である。

[具体的データ]

(石川県農業総合研究センター)

[その他]
研究課題名:加工用米の加工適性評価方法の開発
予算区分: 県単
研究期間:2008〜2010年度
研究担当者: 有手友嗣、山田幸信、三輪章志

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