耐倒伏性で極大粒・高品質な黒大豆系統だいず「東山黒215号」


[要約]
だいず「東山黒215号」は極大粒・高品質の黒大豆系統である。耐倒伏性およびダイズモザイク病抵抗性を有し、栽培特性が優れる。粒の外観品質に優れ、蛋白質含有率が高く、煮豆および豆腐原料に利用できる。

[キーワード]大豆、ダイズモザイク病、極大粒、黒大豆、耐倒伏性

[担当]長野野花試・畑作育種部(農林水産省大豆育種指定試験地)
[代表連絡先]電話:0263-52-1148
[区分]作物、関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
極大粒の黒大豆は高級煮豆原料として一定の需要が見込まれ、高付加価値大豆として位置づけられる。また、黒豆および加工品を地域特産品として直売所等で販売できるため、極大粒で良質な黒大豆品種への関心は高まっている。一方、北陸・東山地域における黒大豆栽培は、在来種など古くからの品種が主体となっていることから、栽培特性やウイルス病抵抗性が不十分な品種が多く、より栽培しやすく高品質な黒大豆品種の導入が強く望まれている。そこで、ダイズモザイク病に強く、耐倒伏性で栽培しやすい、極大粒の良質な黒大豆品種を育成する。

[成果の内容・特徴]
1. 「東山黒215号」は、1997年に長野県中信農業試験場(現長野県野菜花き試験場・農林水産省大豆育種指定試験地)において、大粒で草姿が優れる「信濃早生黒」を母、極大粒でダイズモザイク病抵抗性の「玉大黒」を父とした人工交配から育成したダイズモザイク病抵抗性の極大粒黒大豆系統である(表1)。
2. 成熟期は育成地の標播で「玉大黒」より2日遅く、「信濃早生黒」より3日遅い中生種で、晩播ではこれら品種と同熟期である(表1)。新潟県では標播で「信濃早生黒」と同日、晩播で4日遅い(表1)。
3. 子実重(収量)は、育成地では「玉大黒」並で、「信濃早生黒」並からやや多い(表1)。新潟県では「信濃早生黒」並である(表1)。
4. 耐倒伏性は「信濃早生黒」と同程度で、草姿は「玉大黒」より優れる(表1写真1)。青立ちの発生は「玉大黒」と同程度かやや多いが、裂皮粒およびしわ粒の発生は「玉大黒」および「信濃早生黒」より少なく、粒の外観品質に優れる(表1、写真2)。
5. 百粒重(粒大)は「玉大黒」よりよりやや軽いが、同じ“極大粒の小”に分類され、「信濃早生黒」より重い。蛋白質含有率は「玉大黒」より高い(表1写真2)。煮豆および豆腐適性は「玉大黒」および「信濃早生黒」と同程度である(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 栽培適地は東北南部、北陸、東山地域である。新潟県で種子対策品種として採用し、「信濃早生黒」等の黒大豆に置き換えて普及する予定である。また、長野県では普及技術とし、「玉大黒」等の黒大豆品種の一部に置き換えて普及する予定である。普及見込み面積は新潟県30ha、長野県20ha(2015年度)である。
2. ダイズシストセンチュウと黒根腐病に対する抵抗性がないので連作を避け、発生したことのある圃場へは作付けしない。
3. 干ばつ時の灌水や莢実害虫の防除等を適切に行い、莢数確保に努める。

[具体的データ]

(長野県野菜花き試験場)

[その他]
研究課題名:寒冷地南部及び温暖地北部向け高品質、病虫害複合抵抗性大豆の育成
予算区分:指定試験
研究期間:1997〜2010年度
:高橋浩司、坂元秀彦、関功介、矢ケ崎和弘、山田直弘(作物研)、袖山栄次、
研究担当者: 谷口岳志(長野県庁)、牛山智彦(長野農試)、高松光生(長野農試)、重盛勲、高橋信夫(元 長野農試)、田中進久(元 長野中信)、元木悟

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