夏期湛水圃場管理による麦作のアブラナ科帰化雑草種子の耕種的防除技術
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[要約] |
麦作で問題となる帰化雑草ヒメアマナズナ、クジラグサ、グンバイナズナの種子死滅のため、夏期に2ヶ月間の常時湛水とする圃場管理を行うと生存種子を1%未満に激減できる。 |
[キーワード]ヒメアマナズナ、クジラグサ、グンバイナズナ、夏期湛水、埋土種子 |

[担当]長野農業試・作物部
[代表連絡先]電話:026-246-9783
[区分]関東東海北陸農業・水田作畑作
[分類]技術・普及 |
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[背景・ねらい] |
ヒメアマナズナ(Camelina microcarpa)、クジラグサ(Descurainia sophia)、グンバイナズナ(Thlaspi arvense)は冬生一年生のアブラナ科帰化雑草である。これらの草種が近年、長野県の小麦連作栽培をする地域の圃場に侵入し、減収および作業性の低下を招くなど大きな問題となっている。そこで、小麦収穫後の復田または夏期の短期湛水による防除効果を明らかにし、耕種的防除技術を示す。 |
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[成果の内容・特徴] |
1. |
小麦収穫後に畑条件で不耕起(地表面)または耕起(土中)管理とすると、越夏したヒメアマナズナ、クジラグサ、グンバイナズナ種子は、おおむね90%以上が生存種子(休眠覚醒種子+休眠種子)で、死滅した種子は1割程度にとどまる(図1〜3)。 |
2. |
小麦収穫後に代かきをして常時湛水管理すると、雑草種子の生存割合は1ヶ月間の湛水では10%程度となるが、2ヶ月間の湛水では1%未満になり、埋土種子を大きく減少させることができる(図1〜3)。 |
3. |
小麦収穫後に代かきをして短期入水を繰り返す(3日湛水、4日落水)管理とすると、2ヶ月間処理しても雑草の生存種子割合が0〜90%と効果が大きく変動する。短期入水の繰り返しは防除効果が不安定である(図1〜3)。 |
4. |
小麦の収穫放棄に至ったグンバイナズナ激発圃場で翌年に水稲1作を行うと、グンバイナズナの埋土種子量は水稲作付前の約90,000粒/m2から水稲作後で約5,700粒/m2に大幅に減少する。この圃場における次作小麦のグンバイナズナ発生密度は、小麦収穫期に75個体/m2となり根絶には至らない(表1)。 |
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[成果の活用面・留意点] |
1. |
麦作のアブラナ科帰化雑草の耕種的防除対策として活用する。 |
2. |
復元田の湛水処理は、常時湛水ができるよう、透水性の高い圃場では漏水対策を行う |
3. |
水稲作への転換圃場で、代かき土壌の還元層が発達しにくい土壌条件、入水から中干しまでの期間に平均気温がおおむね20℃以下の場合は、埋土種子の死滅効果が劣る。このため、雑草の多発圃場では、2作以上の水稲栽培、もしくは、水稲1作で麦作復帰の場合には播種後のジフルフェニカン・トリフルラリン混合剤の使用が必要である。
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[具体的データ] |
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[その他] |
研究課題名:麦類・大豆の良質・多収安定栽培技術
予算区分:県単
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:青木政晴、酒井長雄、土屋学、浅井元朗(中央農研)
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