小麦作におけるアブラナ科帰化雑草の出芽消長と防除体系


[要約]
ヒメアマナズナ、クジラグサ、グンバイナズナの多発圃場では小麦の減収は30〜50%に及ぶ。雑草の出芽は小麦播種後1ヶ月間に集中し、晩播条件での出芽数は20〜30%に減少する。播種後出芽前のジフルフェニカン・トリフルラリン混合剤が有効である。

[キーワード]ヒメアマナズナ、クジラグサ、グンバイナズナ、出芽様態、防除体系、小麦

[担当]長野農業試・作物部
[代表連絡先]電話:026-246-9783
[区分]関東東海北陸農業・水田作畑作
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
ヒメアマナズナ(Camelina microcarpa)、クジラグサ(Descurainia sophia)、グンバイナズナ(Thlaspi arvense)は冬生一年生のアブラナ科帰化雑草である。これらの草種が近年、長野県の小麦連作栽培をする地域の圃場に侵入しているため、有効な防除対策が求められている。これら草種の小麦生産への被害程度ならびに越冬前後の出芽消長を把握し、適切な化学的、耕種的防除体系を示す。

[成果の内容・特徴]
1. ヒメアマナズナの草丈は小麦より20cm程高く機械収穫の支障となり、小麦の減収は28%程度となる(表1)。クジラグサの草丈は小麦より30cm程高く機械収穫の支障となり、甚大に発生すると38%程度の減収となる(表1)。グンバイナズナの草丈は小麦より30cm程低く目立たないものの、小麦の減収は50%程度に及ぶ(表1)。
2. 3草種とも出芽は小麦播種後1ヶ月間に集中して出芽する(図1)。ヒメアマナズナは越冬前までに95%以上が出芽するが(図1)、クジラグサとグンバイナズナは3月まで出芽が継続する(図1)。
3. 11月第4半旬播種の晩播とするとヒメアマナズナ、クジラグサともに出芽数は標準播(10月4〜5半旬)の約20%に減少する(_blank)。グンバイナズナ出芽数は30%に減少する(図2)。出芽時期の遅い個体は越冬中の死滅率が高いため、晩播では雑草生存数がさらに減少する(データ略)。
4. 3草種ともに播種後出芽前のジフルフェニカン・トリフルラリン乳剤処理の効果がきわめて高い(表2)。
5. 生育期処理剤による防除効果はチフェンスルフロンメチル水和剤がピラフルフェンエチルフロアブル剤に比べて全般に高い。グンバイナズナに対する防除効果は他2草種に比べて劣る(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 発生圃場の防除の指針となる。発生圃場では播種後出芽前の土壌処理型除草剤が推奨される。多発圃場では生育期処理剤との体系処理および晩播も有効である。播種後土壌処理剤による防除を逸した場合には、越冬後の茎葉処理剤による防除も可能だが、土壌処理剤に比べてその効果は劣る。
2. 晩播による越冬前後の生育不足のため、凍上害、減収や品質低下となる可能性もあるので地域により播種期を設定する。
3. 積雪が少なく温暖な条件では冬期も出芽が続く可能性があるため,出芽状況を確認して適切な防除対策を講ずる必要がある。
4. ジフルフェニカン・トリフルラリン混合剤による防除効果はジフルフェニカンによると考えられる。

[具体的データ]

(長野県農業試験場)

[その他]
研究課題名:麦類・大豆の良質・多収安定栽培技術
予算区分:県単
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:青木政晴、酒井長雄、土屋学、浅井元朗(中央農研)

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