小麦「東海103号」の奨励品種採用


[要約]
早生、多収で栽培特性が優れ、日本めん用としての加工適性が優れる小麦「東海103号」を奨励品種に採用する。

[キーワード]東海103号、小麦、奨励品種

[担当]愛知農総試・作物研究部・作物グループ
[代表連絡先]電話:0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作(冬作)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
愛知県における小麦栽培面積は、2010年産で5,200haであり、1952年に奨励品種に採用された中生種の「農林61号」が3,103ha、2004年に採用された早生種の「イワイノダイチ」が2,097ha栽培されている。「イワイノダイチ」は、早生、多収、「やや低アミロースタイプ」であること、粉の色がきれいであること等が評価され採用されたが、生地物性が弱いために単一品種では日本めんに加工しにくいことが実需者から指摘されるようになった。一方、「農林61号」も、収穫期が遅く梅雨の時期と重なること、倒伏しやすいこと、日本めん用としては色がくすみ、食感が優れない等、栽培特性、加工適性の両面で問題がある。以上のことから、生産者、実需者から求められる、栽培特性、加工適性の優れる新品種を導入し、県産小麦の品質を向上し、生産振興を図る。

[成果の内容・特徴]
奨励品種決定調査の結果、優れた特性を持つことが確認された小麦「東海103号」を愛知県の奨励品種に採用する。「東海103号」は「イワイノダイチ」と比べて以下の特徴をもつ。
1. 出穂期は2日遅く、成熟期は1日遅い(表1)。
2. 稈長は同程度か短い。穂長及び穂数は同程度(表1)。
3. 収量は20%程度多い(表1図1)。
4. 外観品質は良い(表1)。
5. 原粒の蛋白質含量は同程度か少ない(表1)。
6. ゆでめんの食感(硬さ、粘弾性、滑らかさ)が優れる(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 普及地域は、小麦の主産地である愛知県西三河平たん部を中心とし、「イワイノダイチ」の大部分と「農林61号」の一部に替えて普及する。普及予定面積は、2016年産で2,000haである。
2. 蛋白質含量を適正にするための肥培管理を行う必要がある。
3. 赤かび病抵抗性は、「イワイノダイチ」、「農林61号」と同等の「中」であるため、適切な防除を実施する。
4. アミロース含量は「イワイノダイチ」と同じ「やや低アミロースタイプ」である。

[具体的データ]
表1 奨励品種決定基本調査
表2 奨励品種決定現地調査
図1 奨励品種決定現地調査における多収性 表3 ゆでめんの官能評価試験

(野々山利博)

[その他]
研究課題名:小麦奨励品種決定調査
予算区分:県単
研究期間:2006〜2010年度
研究担当者:野々山利博、吉田朋史、橋詰一、久野智香子、辻孝子、藤井潔、加藤裕司

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