摘心による大豆「フクユタカ」狭畦栽培の作期前進


[要約]
摘心技術を組み入れることで、「フクユタカ」の狭畦栽培の播種期を7月上中旬まで前進できる。摘心狭畦栽培は、倒伏が軽減されることで収量は安定し、慣行の中耕培土栽培と同等の収量が得られる。

[キーワード]大豆、摘心、狭畦栽培、フクユタカ

[担当]三重農研・作物研究課
[代表連絡先]電話:0598-42-6354
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
三重県の大豆作は,作付面積3490ha(2010年度・普及センター調べ)の23.5%・820haで「フクユタカ」を用いた無中耕無培土の狭畦栽培が行われている。狭畦栽培は晩播対応技術として7月下旬以降での播種が指導されているが全面積を狭畦栽培する経営体も多く、7月中旬頃からの早播き、強雨、台風による倒伏の発生、また、天候不順による8月中旬以降までの播種遅延による生育量不足のため、収量・品質は不安定になりがちである。そこで、大豆の生育制御に有効な摘心技術を組み入れた7月上中旬に播種可能な摘心狭畦栽培技術を確立し、「フクユタカ」の生産安定と生産拡大を図る。

[成果の内容・特徴]
1. 7月上中旬播種の摘心狭畦栽培は狭畦栽培に比べて、主茎長は25〜30cm短くなり,倒伏は約2ランク軽減され、稔実莢数が増加し収量も多くなる。また、中耕培土栽培と比べても同等の収量が得られる(表1)。
2. 7月上中旬播種の摘心狭畦栽培は、生育過剰や早期倒伏のために狭畦栽培が低収となった条件において、狭畦栽培に比べて収量は15〜90kg/10a高く、収量の安定性が高い(図1)。
3. 7月中旬播種の摘心狭畦栽培は7月下旬播種の狭畦栽培に比べて、生育量を確保しやすく、倒伏の軽減による受光態勢の改善と収穫ロスの減少により、コンバイン収穫実収量は増加する(図2)。
4. 摘心作業に使用する乗用管理機のトレッドと播種条間を適合させておくことで、作業能率70a/時間と高能率な作業が可能である(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 三重県の水田輪換畑における「フクユタカ」栽培に適用できる。7月上中旬に狭畦栽培を行う場合は摘心を前提とした作業計画を立てる。また、7月下旬播種の狭畦栽培でも倒伏が予測される場合は摘心による収量安定の効果が期待できる。
2. 摘心機は2010年度に受注生産が始まり、生産現場に導入されている。
3. 栽植密度は7月上中旬播種では慣行の中耕培土栽培と同等とし、7月下旬以降の播種では1.5〜2培にする。
4. 開花期直前になると生育量が大きくなり作業能率が低下しやすいことから、摘心は開花の約2週間前〜5日前に実施する。
5. 乗用管理機の車輪が条間中央付近になるように条間を設定する。また、奇数条跨ぎでは中央上の摘心率が低下しやすいので、偶数条跨ぎとなる条間設定が望ましい。

[具体的データ]

(北野順一)

[その他]
研究課題名:大規模水田営農を支える省力・低コスト技術の確立
     温暖地湿田のイネ直播・浅耕栽培を基軸とする水田輪作技術の体系化と実証
予算区分 :受託、委託プロ
研究期間 :2006〜2010年度
研究担当者:北野順一、中山幸則、中西幸峰、大西順平

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