2010年夏季の高温が愛知県の水稲玄米外観品質に与えた影響


[要約]
愛知県における2010年夏季の高温状態は9月上旬まで続き、これまでは障害粒の発生が少ない早生・中生品種についても玄米外観品質の低下をもたらした。また、多くの品種で、玄米蛋白質含量と整粒歩合との間に正の相関が認められた。

[キーワード]イネ、玄米外観品質、平均気温、玄米蛋白質含量

[担当]愛知県農業総合試験場・作物研究部・作物グループ
[代表連絡先]電話:0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
2010年における愛知県の水稲登熟期間は、平年に比較して長期にわたり高温に見舞われた。このため、これまでは高温障害を起因とする玄米外観品質 (以下、外観品質と略する。) の低下が認められなかった早生・中生品種でも、白未熟粒が多発生した (一等米比率20.7%、平成22年10月31日現在) 。
  本研究では、愛知県内平坦部の現地ほ場から玄米サンプルを幅広く収集し、2010年度夏季の高温が外観品質に与えた影響を検討するとともに、今後の技術開発の糸口を得ることを目的とした。

[成果の内容・特徴]
1. .2010年は、7月下旬から9月上旬まで、日平均気温が27℃前後で推移した(データ省略)。
2. 外観品質に強く影響する出穂後20日間の平均気温は、8月15日前後出穂が最も高く、8月30日出穂まで27℃より高かったことから、極早生品種から中生品種の出穂期前半まで登熟期間初中期に高温の大きな影響を受けたと判断された(図1)。
3. 全玄米サンプルの整粒歩合は、出穂後20日間の平均気温が上昇すると低下する傾向がみられた(図2)。このことから、2010年は、品種に関わらず、夏季の高温により外観品質が低下したと考えられた。
4. 玄米蛋白質含量が上昇すると「コシヒカリ」、「ゆめまつり」では基部未熟粒が、「あさひの夢」、「あいちのかおりSBL」では基部未熟粒や乳白粒が減少したが、整粒歩合は増加した(表1)。一方、「みねはるか」は玄米蛋白質含量と整粒歩合との間に明確な関係が認められなかった。
5. 「コシヒカリ」について、移植栽培と比較すると不耕起V溝直播栽培は、整粒歩合が高く基部未熟粒の発生が少なかった(図3)。また有意な差は無いものの、不耕起V溝直播栽培で入水時から20cm程度のたん水深を保つ深水無落水栽培は、通常の不耕起V溝直播栽培に比較して整粒歩合が高く、外観品質向上手法として有望と考えられた。

[成果の活用面・留意点]
1. 本研究の結果は、玄米外観品質向上技術開発に寄与できる。
2. 本研究は、愛知県の平坦部で生産された玄米を対象とした。

[具体的データ]
図1 出穂後20日間の平均気温の推移 表1 玄米蛋白質含量と外観品質との関係
図2 出穂後20日間の平均気温と整粒歩合との関係(N=222)
図3 栽培方法が整粒歩合および基部未熟粒比に与える影響(2010年)

(林 元樹)

[その他]
研究課題名:土地利用型作物における高品質生産体系の確立
予算区分:県単
研究期間:2010年度
研究担当者:林元樹、杉浦直樹(広域指導G)、本庄弘樹(水田利用G)

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