ポリマルチ畦間に大麦リビングマルチを利用するサツマイモの無除草剤栽培法


[要約]
サツマイモ栽培において、3月中旬頃にポリマルチを設置しマルチ畦間に秋播き性の高い大麦を10g/m2程度播種すること(リビングマルチ)により、無除草剤で栽培期間中の雑草抑制が可能である。サツマイモの上いも収量は慣行栽培と同等である。

[キーワード]大麦、サツマイモ、無除草剤、リビングマルチ

[担当]中央農研・カバークロップ研究関東サブチーム
[代表連絡先]電話:029-838-8522
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作、共通基盤・雑草
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
消費者の安全・健康志向や環境負荷軽減への関心が高まる中で、環境保全型農業や有機農業で利用可能な省除草剤栽培技術の開発が求められている。そこで、関東地方で広く栽培されているサツマイモを対象に、カバークロップとの混作(リビングマルチ)により、作物とリビングマルチとの競合を回避しつつ、ポリマルチ畦間に発生する雑草を除草剤を使わずに効果的に抑制する栽培法を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 本栽培法は、3月中旬頃にポリマルチを設置し、マルチ畦間部分に秋播き性の高い大麦を10 g/m2程度播種することにより、リビングマルチとして雑草抑制に利用するものである(図1)。サツマイモは慣行の5月中〜下旬に挿苗し、除草剤は使用しない。大麦は7月上旬頃までに自然に枯死する。
2. 大麦リビングマルチは、3月播種により雑草の乾物重を顕著に抑制する。サツマイモの挿苗時(5月)に大麦を播種した場合でも抑草効果はあるが、5月播種に比べて3月播種のほうが抑草効果が高い(図2)。
3. 3月播種した大麦リビングマルチは、雑草の発芽後の生育を抑制し個体数を減少させる。特にメヒシバに対して抑制効果が高い(図3)。
4. 3月播種による大麦リビングマルチ栽培では、サツマイモの上いも収量は慣行栽培と同等であるが、茎葉乾物重は慣行栽培に比べてやや低下する。5月播種では、雑草害等により上いも収量、茎葉乾物重ともに慣行栽培より低下する(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 有機栽培など除草剤を使用しない栽培における抑草技術として利用できる。
2. 本試験は、茨城県つくば市の中央農研畑圃場(淡色黒ボク土:TN=0.4〜0.5%、CN比=11〜13、pH=6.3〜6.5)で実施した。大麦播種時期(3月中旬)のつくば市の平均気温は約6℃である。使用した品種は、サツマイモはパープルスィートロード、大麦は「てまいらず」(カネコ種苗株式会社)である。
3. 本栽培法では、慣行栽培に比べ地上部の茎葉乾物重が低下する傾向にあるので、低養分の土壌条件等では地上部が十分生育せず、収量に影響を与える可能性がある。また,雑草種子量の増加を抑制するため,サツマイモ挿苗時などに残存している(目立つ)雑草を取り除くことが望ましい。

[具体的データ]
図1 大麦リビングマルチを利用したサツマイモの無除草栽培の作業手順(関東地域)
図2 雑草の乾物重の推移(2009年)LMはリビングマルチの略
図3 雑草の発生本数と草種別構成比(2009年)
表1 サツマイモの上いも収量と茎葉乾物重

(三浦重典)

[その他]
研究課題名:カバークロップ等を活用した省資材・環境保全型栽培管理技術の開発
中課題整理番号:214c
予算区分:基盤
研究期間:2006〜2010年度
研究担当者:三浦重典、中谷敬子、澁谷知子、鄭凡喜

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