「Modan」以外のインド型品種に由来するイネ縞葉枯病抵抗性選抜マーカー


[要約]
DNAマーカーST48およびST64を用いることで、飼料用稲品種の縞葉枯病抵抗性選抜が可能となり、抵抗性遺伝子Stvb-i の由来を「Modan」と「Modan以外の品種」に判別することができる。

[キーワード]イネ、飼料用稲、縞葉枯病、抵抗性品種、DNAマーカー

[担当]作物研究所・低コスト稲育種研究チーム、中央農研・病害抵抗性研究チーム
[代表連絡先]電話:029-838-8536
[区分]作物、関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作、共通基盤・病害虫
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
飼料用稲品種などの新規需要米向け水稲品種については低コスト栽培が求められるため、病虫害抵抗性の向上が重要であり、イネ縞葉枯病抵抗性についても必須となっている。イネ縞葉枯病のマーカー育種は「Modan」由来の縞葉枯病抵抗性遺伝子Stvb-i に関する選抜法が開発されているが、同じ抵抗性遺伝子Stvb-i であっても「Modan」以外のインド型品種に由来する抵抗性の選抜は不可能であったため、飼料用稲品種などの育成には利用できなかった。そこで、昨年度開発された縞葉枯病抵抗性の高精度マーカーを用いて、「Modan」以外のインド型品種に由来する抵抗性にも利用可能なDNAマーカー選抜方法を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 開発された高精度DNAマーカー(ST48、ST64)を用いて代表的な飼料用稲品種および作物研究所育成の有望系統について調査した結果は、表1の通りである。
2. DNAマーカーST48は共優性マーカーであり、これを用いることで「Modan」由来の縞葉枯病抵抗性だけでなく、「Modan」以外のインド型品種に由来する抵抗性についても選抜が可能となる(図1)。
3. DNAマーカーST64を用いることで、抵抗性遺伝子Stvb-i の由来を「Modan」とそれ以外のインド型品種に判別することが可能となる(図1)。

[成果の活用面・留意点]
1. ST64を用いることで、「タチアオバ」のように飼料用稲品種でも「Modan」由来の縞葉枯病抵抗性を持つ品種が明らかとなる。「Modan」由来の縞葉枯病抵抗性を有する品種は、穂いもち抵抗性遺伝子Pb1 が導入されている可能性がある。
2. 「ミナミユタカ」については、ST48では抵抗性のバンドパターンを示し、ST64では感受性型のパターンを示す。そのため、「ミナミユタカ」に由来する選抜集団ではこれらのマーカーは使用できない。
3. 日本陸稲由来抵抗性遺伝子Stvb を持つ系統は、マーカーST48およびST64において感受性のバンドパターンとなるため、これらのマーカーでは選抜できない。
4. 本マーカーの配列情報は、中央農研・病害抵抗性研究チームまで問い合わせ願いたい。

[具体的データ]

(前田英郎)

[その他]

研究課題名:直播適性に優れた高生産性飼料用稲品種の育成
中課題整理番号:212-a
予算区分:基盤
研究期間:2009〜2010年度
研究担当者:前田英郎、常松浩史、加藤浩、春原嘉弘、早野由里子(中央農研)



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