無リン酸液肥を用いたキュウリ養液土耕栽培の低コスト化技術
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[要約] |
可給態リン酸が40mg/100gを超えているキュウリのリン酸蓄積ほ場では、養液土耕専用肥料の施用に代えてリン酸成分を含まない液肥によって、収量を落とさずに肥料コストを50〜60%削減できる。 |
[キーワード]キュウリ、養液土耕栽培、リン酸過剰ほ場、無リン酸液肥、肥料コスト |
[担当]長野野花試・環境部
[代表連絡先]電話:0263-52-1148
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]技術・普及 |
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[背景・ねらい] |
養液土耕栽培は、施肥効率の高い栽培方法としてすでに全国に広がっている。長野県内のキュウリほ場ではリン酸が過剰に蓄積されている実態があり、近年、土壌分析に基づいた効率的施肥の奨励や肥料価格の高騰を受けて、リン酸過剰に対応した施肥方法が望まれている。養液土耕栽培では三要素を含んだ専用肥料の施用が慣例となっており、リン酸過剰に対応していない。ここでは、キュウリ養液土耕栽培において、リン酸が過剰に蓄積したほ場で、専用肥料に代わるリン酸成分を含まない液肥を用いた栽培方法を確立する。 |
[成果の内容・特徴] |
1. |
点滴施肥する無リン酸液肥(無リン酸区)は、養液土耕専用肥料(専用肥料区)の窒素と加里と同量になるよう硝安と硝酸加里(大塚ハウス3号)で作製し、無リン酸区は専用肥料区の40〜50%の肥料コストとなる。定植前の可給態リン酸は2ヵ年のリン酸過剰処理により全体的に増加するが、試験区の差はみられない(表1)。 |
2. |
無リン酸区の収量は、リン酸過剰処理前の2006年では専用肥料区より低い傾向がみられるが、2007年以降は差がなく、2008年、2009年はむしろ高くなる傾向を示す(図1)。 |
3. |
葉中のリン酸濃度を比較すると、各試験年とも無リン酸区のリン酸濃度が専用肥料区より低い傾向で、無リン酸液肥により植物体中のリン酸濃度が低下する(表2)。 |
4. |
可給態リン酸が499mg/100gの農家ほ場では無リン酸区の葉中リン酸濃度が低下し増収が認められる。可給態リン酸が194mg/100gの農家ほ場では無リン酸区と専用肥料区は同等の収量がみられる(表3)。 |
5. |
以上より、可給態リン酸が40mg/100gを超える場合リン酸成分を含まない液肥を用いた施肥法は肥料コストの低減に有効であり、可給態リン酸が著しく高い場合には肥料コスト低減に加えて増収する。 |
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[成果の活用面・留意点] |
1. |
無リン酸液肥の施用は、従来の養液土耕専用肥料の液肥と同様に行う。 |
2. |
定植前に土壌診断を実施し、本栽培法の適用を判断する。長野県のトルオーグリン酸目標値は30〜40mg/100gであり、本試験結果から40mg/100g以上あれば無リン酸液肥を使用できる。 |
3. |
本試験では、堆肥を毎年3t/10a程度施用している。 |
4. |
硝安の購入に当たっては、消防法上の肥料保管量は180kg(9袋)以下であり、その量までは消防署への届出を必要としない。 |
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[具体的データ] |
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[その他] |
研究課題名:リン酸蓄積圃場の障害回避および適正施肥技術
予算区分:県単
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:齋藤龍司、塩原 孝、木下義明、山口秀和、村山 敏、上原敬義、山田和義、佐藤 強、吉田清志
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