ナシ炭疽病の発生生態と有効薬剤


[要約]
ナシ炭疽病(病原菌:G. cingulata )は千葉県では主に7月中旬〜落葉期に発生し、被害落葉及び花芽が第一次伝染源となる。本病の発生程度には品種間差があり、「豊水」は弱い。デランフロアブル、オキシラン水和剤、ナリアWDG、チオノックフロアブルの効果が高い。

[キーワード]ナシ、炭疽病、発生生態、第一次伝染源、品種間差、防除薬剤

[担当]千葉農林総研・生産環境部・病理昆虫研究室
[代表連絡先]電話:043-291-9991
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
2006年8月、千葉県内の主要ナシ生産地において、ナシ炭疽病による早期落葉が発生した。これまでにナシ炭疽病が本県において問題となったことはないことから、本病防除のために、発生生態を解明し、有効薬剤を明らかとする。

[成果の内容・特徴]
1. 本県におけるナシ炭疽病は分離菌の分生子の形態(鮭肉色、円筒形、大きさ5.9×15.5μm、)及びPCR検定からGlomerella cingulataによるものであり、現地圃場では7月中旬から発生が確認され、その後、落葉期まで拡大する(データ略)。
2. 前年の被害落葉を敷き詰めた石枠(縦180cm×横180cm)に定植した5年生「豊水」樹で翌年に炭疽病が発生すること(表1)、12月〜3月にナシ炭疽病多発生園から採取した枝の花芽から炭疽病菌が高率に分離されることから(表2)、本病原菌は被害落葉及び花芽で越冬し、第一次伝染源となる可能性が高い。
3. ナシ炭疽病の発病程度には品種間差があり、「豊水」及び「なつしずく」は高く、「長十郎」、「新高」及び「二十世紀」はやや高く、「あきづき」、「平塚16号」、「幸水」、「新興」、「なつひかり」及び「若光」は比較的低い(表3)。
4. ナシ炭疽病に対する防除薬剤として、デランフロアブル、オキシラン水和剤、ナリアWDG及びチオノックフロアブルの防除効果が高い(表4)。

[成果の活用面・留意点]
1. 被害落葉の処分と被害の激しかった枝を優先的に剪除することは本病の防除に有効と考えられることから、登録取得した薬剤の情報を含め、県の農作物病害虫雑草防除指針に記載し、防除対策の指導に用いている。
2. 薬剤の散布に当たっては、登録内容に注意して散布する。ナリアWDG等のストロビルリン系剤は防除効果が高いものの、耐性菌の発生の恐れがあるため、使用は必要最低限に抑える。

[具体的データ]

(金子洋平)

[その他]
予算区分:県単
研究期間:2007〜2009 年度
研究担当:金子洋平(千葉農林総研)、牛尾進吾(千葉農林総研)

発表論文等:1)金子ら(2010)、千葉農林総研研報、2:7-16
2)金子ら(2010)、日植病報、76(4):282-285


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