オゾン水を利用したロックウール栽培トマトの養液殺菌システム


[要約]
トマトのロックウール栽培で養液を循環利用するため、オゾン水による養液殺菌システムを開発した。殺菌槽内に入れた養液を直接オゾン水生成装置に取り込み、槽内に戻す循環殺菌では、オゾンガス殺菌に比べ殺菌効率が著しく向上する。

[キーワード]オゾン水、トマト、ロックウール栽培、養液殺菌、根腐萎凋病菌、青枯病菌

[担当]三重農研・循環機能開発研究課
[代表連絡先]電話:0598-42-6357
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)
[分類]技術・参考 

[背景・ねらい]
三重県農業研究所では、養液量の少ないロックウール栽培において養液の循環利用を行うため、オゾンガスを養液にバブリングして殺菌するシステムを開発し、現地導入を図り有効性を確認した(平成13年度成果情報)。しかし、オゾンガスを利用した養液殺菌では、殺菌の効率性がやや悪く、排オゾンガス処理が必要になるなどの問題点が残されていた。そこで、オゾンの殺菌力の向上と排オゾン対策には、オゾン水の利用が有効であると考え、民間企業との共同研究により、オゾン水を利用した養液殺菌技術を開発し、トマトのロックウール栽培への技術導入を図る。

[成果の内容・特徴]
1. 養液の殺菌は、殺菌槽に循環利用する養液を貯め、オゾン水生成装置に養液を直接取り込み、オゾンを溶解させて殺菌槽に戻す循環殺菌を行う方法である(図1)。
2. トマト根腐萎凋病菌および青枯病菌を含む養液を対象にした殺菌力の評価では、オゾン水殺菌がオゾンガス殺菌に比べ、著しく殺菌時間の短縮が図られる(図2)。
3. 殺菌槽から排オゾン処理が必要となるようなオゾンガスは発生しない(データ省略)。
4. 養液にオゾンを溶解すると、肥料組成のうちマンガンのみが酸化され著しく減少する(図3)。なお、鉄はオゾンで酸化されやすいが、キレート鉄の使用により酸化は回避できる(データ省略)。
5. トマトのロックウール栽培用に開発した殺菌装置を組み込み、給液した養液の30%を殺菌後に再利用する循環利用を行った場合、マンガンの追加を実施しなくてもマンガン欠乏の発生は認められず、慣行の養液掛け流しと同等の収量および品質を確保することができる(図4)。

[成果の活用面・留意点]
1. トマトのロックウール栽培において、養液を効率よく殺菌できるため、養液循環利用技術に活用できる。
2. 開発した殺菌システムは、1haまでのトマトのロックウール栽培に対応できる。
3. 養液へのオゾン溶解は、マンガン濃度の著しい低下を起こすことから、マンガン欠乏の障害発生に注意が必要である。

[具体的データ]

(黒田克利)

[その他]
研究課題名:オゾンの農業生産技術への利用
予算区分:県単・JST
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:黒田克利、鈴木啓史、坂田訓章(株式会社ハマネツ)
発表論文等:三重県・株式会社ハマネツ「オゾン養液生成装置」特願2008-049138

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