中期深水管理による直播コシヒカリの収量、品質安定と雑草抑制


[要約]
コシヒカリ湛水直播栽培において、葉齢5〜6Lから9Lの生育中期に水深10cm程度の深水管理をすることにより、分げつ発生を抑制し有効茎歩合を高め、収量・品質を安定させることができる。また、雑草量を抑制することができる。

[キーワード]湛水直播栽培、コシヒカリ、中期深水管理、総合的雑草管理

[担当]福井県農業試験場・栽培部・作物研究グループ
[代表連絡先]電話:0776-54-5100
[区分]関東東海北陸農業・北陸・水田作畑作
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
近年、生産組織や認定農業者の経営規模拡大に伴い、省力・低コスト技術として湛水直播栽培が急速に増加している。しかし、湛水直播では、生育中期の茎数が過剰となり収量品質が不安定となることや、雑草抑制が困難であることが課題となっている。
  本研究成果情報は、中期深水管理でイネ生育制御と中後期雑草発生抑制を図り、直播コシヒカリの収量、品質の安定、向上と総合的な雑草管理を目指したものである。

[成果の内容・特徴]
1. 生育中期(葉齢5〜6Lから9L)に水深10cm程度の深水に管理することで、最高茎数を抑制し、有効茎歩合が高まる(図1)。
2. 穂数はやや減少するが、一穂籾数が増加し、倒伏もわずかに軽減される。その結果、収量、品質は慣行の水管理と同程度か、やや向上する(表1)。
3. 除草剤はイネ1葉期に一発除草剤を1回施用する。中期深水管理により、収穫期の雑草量を減少させることができる(図2)。福井県の慣行湛水直播栽培では除草剤2回散布が一般的であるが、この体系により除草剤1回散布で十分な除草効果が得られる。

[成果の活用面・留意点]
1. 本成果は、過酸化カルシウムコーティング種子を土中条播し、播種後落水出芽した結果である。
2. 中期深水管理を実施する期間は、葉齢5〜6Lから9Lとする。これは、湛水しても軟弱徒長しない時期から最高分げつ期を過ぎた頃までに当たる。
3. 中期深水管理の「深水」は、既存畦畔で湛水可能な水深10cm程度とする。なお、減水がなく水が停滞する圃場では、時々除草剤処理層を破壊しないよう注意しながら換水する。漏水の激しい圃場では、中期深水管理を実施しない。
4. 深水処理によるヒエ等既発生雑草の枯殺効果は期待できないので、1回目の除草剤施用が遅れないよう適切に散布する。散布10日後頃にヒエ等の雑草残草状況を確認し、除草効果が不十分で残草などがあれば、追加で2回目の除草剤を散布する。
5. 中期深水管理を行っても、中干しは9L以降に確実に実施する。

[具体的データ]
図2 収穫期の雑草量

(見延敏幸)

[その他]
研究課題名:水稲湛水直播栽培における播種法の改善によるIWMの検証
予算区分:委託プロ(総合的雑草管理)
研究期間: 2007〜2010年度
研究担当者:見延敏幸、中嶋英裕、和田陽介

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