有機栽培水田で利用する簡易なチェーン除草機の作製方法とその雑草低減効果


[要約]
長さ2mの角棒に約80本のチェーンをのれん状に接続し約7kgのチェーン除草機を作製する。これを用いて水稲移植後2-4日目から5-7日間隔で4-5回作業すると、出穂期の雑草残存本数が半減する。

[キーワード]一年生雑草、機械除草、成苗移植、有機栽培、抑草

[担当]新潟農総研・基盤研究部・環境保全研究チーム
[代表連絡先]電話:0258-35-0823
[区分]関東東海北陸農業・北陸・水田作畑作
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
水稲有機栽培を普及推進するためには、雑草による減収を最小限に抑えるための雑草低減技術の開発が不可欠である。特にこれから有機栽培に取り組みたいと考えている農家は小面積での試行からスタートする可能性が高いため、小面積を手軽に処理できる雑草低減技術が望まれる。そこで低価格で作業性に優れるチェーン除草機を開発し、効果的なチェーン除草機の形状・除草適期などに関する基本的な条件を提示する。

[成果の内容・特徴]
1. 長さ 2mの角棒にヒル釘を用いて約 80本のチェーンをのれん状に接続し約 7kgの 6条用チェーン除草機を作製する (図1)。チェーン除草機の材料は金物屋やホームセンターから 1.5万円程度で調達でき、1日程度で作製できる。また土壌条件や体力等に合わせてチェーンの取り付け角度や間隔、除草機の幅等を調整改良できる。
2. 地表面から発芽した 1葉展開程度の活着していない一年生雑草を主な対象として、5月下旬から 6月上旬の成苗 (葉齢 4.5-5.5) 移植後 2-4日目 (植代から 1週間以内) にチェーン除草機を植条に沿って人力で牽引する (図2表1)。以降 5-7日間隔 (新たに発芽してくる雑草が活着する前に) で 4-5回作業 (最高分げつ期まで) することで、出穂期の雑草残存本数と乾物重が半減し、減収を抑制できる (図3)。なお、1回の作業時間の目安は 30-40分/10aである。
3. 除草作業は稲に泥が被らないように湛水深5-10cm程度で行い、田面に浮遊した雑草幼芽の再活着を防ぐため移植後40-50日間湛水深を維持する。
4. 除草作業時の稲株の最低引抜強度が28gf以下では浮苗を生じる可能性がある (表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 活着して葉齢の進んだ雑草や塊茎雑草に対する除草効果は期待できない。
2. 除草作業時にチェーンが土壌表面を撹拌できる程度に柔らかい状態でないと効果は劣る。
3. 作業効率向上を目的として溝切り機・乗用管理機・ウィンチなどを用いてチェーン除草機を牽引する場合は、耕盤の強化や除草機の補強が必要になる。
4. 本成績は、新潟県長岡市のコシヒカリ有機栽培試験水田 (除草剤不使用10年目、細粒グライ土、 市販有機肥料5gN m-2、コナギ埋土種子量10万粒 m-2、ホタルイ埋土種子量10万粒 m-2、ヒエ埋土種子量2千粒 m-2) における試験結果である。

[具体的データ]
図3 出穂期の残存雑草の個体数と乾物重および収穫時の精玄米重

(新潟県農業総合研究所)

[その他]
研究課題名: 地域内資源を循環利用する省資源型農業確立のための研究開発
予算区分:   委託プロ(省資源プロ)
研究期間:  2009〜2010年度
研究担当者: 古川勇一郎、白鳥豊

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