窒素施用方法の違いがチューリップ微斑モザイクウイルスの感染率に影響する


[要約]
チューリップ微斑モザイクウイルスの感染率に施肥条件の違いが影響する。特に緩効性肥料による施肥、窒素成分の低減、及び追肥のみによる施用によってウイルス感染率が大きく減少する。

[キーワード]チューリップ微斑モザイク病、施肥法、基肥窒素、施肥時期、感染抑制

[担当]富山農総セ・園研・花き課
[代表連絡先]電話:0763-32-2259
[区分]関東東海北陸農業・北陸・生産環境、共通基盤・病害虫(病害)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
チューリップ微斑モザイク病はOlpidium 属菌により媒介される土壌伝染性ウイルス病害である。土壌伝染病の多くは発生が土壌環境に影響されることから、施肥法を検討することによって本病害の発生を抑制できる可能性がある。富山県のチューリップ球根栽培において、生産者間で微斑モザイク病の発生に顕著な差があり、その理由の一つとして施肥の違いが考えられた。そこで施肥法の違いがチューリップ微斑モザイクウイルスの感染率に与える影響を明らかにし、肥培管理技術による本病害の被害低減技術の開発に資する。

[成果の内容・特徴]
1. 球根専用緩効性肥料施用でのチューリップ微斑モザイクウイルス感染率は、球根専用複合肥料施用と比較して有意に低下する(図1)。
2. 球根専用複合肥料と同量のNPKとなるよう硫安・過石・塩化カリを施用しても感染率は変わらない。しかし、窒素成分を除いたPKのみが同量となるよう過石・塩化カリを施用すると無肥料の場合と同等に感染率が低下する(図2)。
3. 球根専用複合肥料において、基肥と追肥の施用と基肥のみの施用の感染率は変わらないが、追肥のみの施用では感染率が低下する(図3)。
4. 以上から、施肥条件の違いがOlpidium 属菌を介したチューリップ微斑モザイクウイルスの感染に強く影響し、特に緩効性肥料による施肥、窒素成分の低減、及び追肥のみによる施用がウイルス感染率を減少させる。

[成果の活用面・留意点]
1. 本知見は難防除土壌伝染性ウイルス病の発生抑制法の新しい切り口を開くものと考えられる。
2. 今後、微斑モザイク病の被害低減技術を確立するために、詳細な窒素施肥の時期や量などの肥培管理を検討する必要がある。
3. 微斑モザイク病抵抗性が極弱の品種「ラッキーストライク」による結果である。
4. 微斑モザイクウイルスの感染率を低下させる詳細な機作は不明である。

[具体的データ]
図1 肥料の種類がチューリップ微斑モザイクウイルスの感染に与える影響(現地試験)
図2 窒素成分がチューリップ微斑モザイクウイルスの感染に与える影響(2010年現地試験 図3 施肥時期の違いがチューリップ微斑モザイクウイルスの感染に与える影響(2010年現地試験)

(森脇丈治)

[その他]
研究課題名:難防除土壌伝染性ウイルスの耕種的・生物的防除
予算区分: 指定試験
研究期間:2008〜2010年度
研究担当者: 森脇丈治、桃井千巳、守川俊幸

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