冬期湛水した飼料用米の不耕起V溝直播栽培による地下浸透水量の増大
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[要約] |
飼料用米の作付けにおいて、中干しを行わない不耕起V溝直播栽培と、冬期代かき後の冬期湛水を組み合わせることにより、年間の地下浸透水量の増大効果は大きくなる。 |
[キーワード]飼料用米、地下浸透水、不耕起V溝直播栽培、冬期湛水 |

[担当]石川農研・資源加工研究部・生物資源グループ
[代表連絡先]電話:076-257-6911
[区分]関東東海北陸農業・北陸・生産環境
[分類]技術・参考 |
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[背景・ねらい] |
手取川流域では、農村の都市化や工業化及び水稲作付面積の減少による地下水位の低下が懸念されており、30年間で5m低下している観測例も見られる。一方、水田有効活用のため作付けが推進されている飼料用米等の導入は地下浸透水量を増やし、地下水の涵養源になると考えられる。そこで、飼料用米適性品種である「北陸193号」の作付けによる地下浸透水量の増大効果を明らかにする。 |
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[成果の内容・特徴] |
1. |
作付期間における浸透水量は、「北陸193号」の不耕起V溝直播栽培(以下、V溝)が645mmと最も多く、「コシヒカリ」の移植の1.7倍である(図1)。中でも6〜7月の浸透水量が多く、これはV溝では中干しを行わないことによる(図2)。 |
2. |
非作付期間における浸透水量は、冬期湛水により956〜1,090mmとなり、冬期湛水しない場合の1.7〜1.9倍となる(図1)。冬期湛水のV溝の湛水期間(2月)と冬期湛水の移植の湛水期間(12〜3月)の浸透水量は、冬期湛水しない場合より多い(図3)。 |
3. |
非作付期間と作付期間を合わせた年間浸透水量は、冬期代かき後に冬期湛水した「北陸193号」のV溝が最も多く1,601mmであり、冬期湛水をしない「コシヒカリ」の移植の1.7倍となる。また、冬期湛水を行う「北陸193号」の移植では、「コシヒカリ」の移植の1.6倍となる(図1)。 |
4. |
以上の結果から、中干しを行わない不耕起V溝直播栽培による飼料用米の作付けにおいて、冬期代かき後に冬期湛水を行うことにより地下浸透水量は最も大きくなる。 |
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[成果の活用面・留意点] |
1. |
手取川流域等、冬期湛水のための用水が潤沢で、地下水位低下等の問題が懸念されている地域で活用する。 |
2. |
V溝では初期生育を確保するため浅水管理とし中干しは実施しないが、収穫機の地耐力は確保できる。 |
3. |
V溝の冬期湛水は、2月に代かき後2週間行った。また、移植の冬期湛水は11月から3月上旬の間、水尻を閉め表面排水を抑えた。 |
4. |
春作業に支障がないよう、冬期湛水後の地耐力に留意する。 |
5. |
中粗粒灰色低地土ほ場の成果であり、グライ土では地下浸透水量の増大効果が劣る。 |
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[具体的データ] |
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[その他] |
研究課題名:農業用水を核とした健全な水循環に関する研究
予算区分:国補(手取川温暖化プロ)
研究期間:2008〜2010年度
研究担当者:工藤卓雄、宇野史生、永畠秀樹、北田敬宇
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