定量PCR法によるダイズ葉焼病菌のダイズ種子からの検出・定量


[要約]
ダイズ葉焼病菌のrpoD遺伝子を特異的に増幅するプライマーとプローブを用いて定量 PCRを行うと、ダイズ種子中に存在する本菌の有無を検出し、汚染種子の割合を定量できる。

[キーワード]ダイズ、葉焼病菌、定量PCR、プライマー、プローブ

[担当]福井農試・生産環境部・病理昆虫研究グループ
[代表連絡先]電話:0776-54-5100
[区分]関東東海北陸農業・北陸・生産環境
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
福井県では、ダイズ葉焼病の発生が増加傾向にある。本病は、種子伝染すると考えられているが、種子中のダイズ葉焼病菌(Xanthomonas axonopodis pv. glycines )を特異的に検出・定量する方法は報告されていない。そこで、本病の汚染種子の割合を診断できる定量PCR (qPCR)法を確立し、防除対策に資する。

[成果の内容・特徴]
1. ダイズ葉焼病菌のハウスキーピング遺伝子であるrpoD遺伝子の塩基配列をもとに設計したプライマー(X. C. glycines-F、X. C. glycines-R)およびプローブ(X. C. glycines-Probe)を用いてqPCRを行うと、本菌DNAの増幅は認められるが、近縁なXanthomonas 属細菌9菌株からは増幅されない(図1)。
2. 本qPCR法では、福井県内で採集したダイズ葉焼病菌60菌株のDNAは増幅するが、圃場で栽培したダイズ葉から分離した細菌30菌株のDNAは増幅しない(データ省略)。
3. 粉砕した健全種子にダイズ葉焼病菌の10倍希釈菌液を添加後、DNAを抽出しqPCRを行うと、6×102〜6×108cfu/gの範囲で定量できる再現性の高い検量線が得られる(表1図2)。
4. 健全種子に対して、汚染種子を5,25,50,75,100%の割合で混合した材料を用いてDNAを抽出しqPCRを行った結果、汚染種子の割合と本菌の定量値との相関が高いことが示される(図3)。このため本qPCR法は、種子の汚染割合を診断するために利用できる。

[成果の活用面・留意点]
1. 本qPCR法によるダイズ種子の保菌の有無や程度の判別により、健全種子の確保・供給のための基礎資料として活用できる。

[具体的データ]
図1 ダイズ葉焼病菌(A)とその近縁のXanthomonas属細菌9菌株(B)のqPCRによる増幅の有無 表1 qPCRのための検量線作成手順
図2 粉砕種子に添加した菌量とCt値との関係(検量線)図3 健全種子に対する汚染種子の混合割合と定量値との関係

(渡辺貴弘)

[その他]
研究課題名:ダイズ葉焼病の診断技術と被害防止技術の確立
予算区分:地域科学技術振興事業
研究期間:2008〜2010年度
研究担当者:渡辺貴弘、澤田宏之(生物研

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