米から抽出できる水溶性の新規糖質(仮称・粘性多糖)
[要約]
米は炊飯すると比較的短時間で軟らかくなり、粘質物(オネバ)を生成する。このオネバの主成分と見られる水溶性の物質を白色粉末として抽出・精製し、これが冷水に溶ける新規糖質であることを発見した。
- 中国農業試験場・作物開発部・品質特性研究室
- 連絡先 0849-23-4100
- 部会名 食品、近畿中国(流通利用)
- 専門 加工利用
- 対象 稲類
- 分類 普及
[背景・ねらい]
穀類やイモ類の炭水化物(糖質)の大部分はデンプンであるが、そのデンプンは冷水に溶けないアミロペクチンとアミロースの2成分で構成されると考えられて
きた。米は炊飯すると比較的短時間で軟らかくなり、特有の粘質物(オネバ)を生じる性質がある。そこでこの米特有の炊飯物性に関与するとみられる未知の糖質
の存在と化学特性を確かめるとともに、その抽出法および精製法を確立する。
[成果の内容・特徴]
- 主食用やもち用の米には冷水に溶ける新規糖質(仮称・粘性多糖)が存在しており、品種・栽培法・米粒内の部位などにもよるが約10〜40%含まれてい る。インディカ米で約10%、ジャポニカうるち米で約15%、ジャポニカもち米で約40%など、アミロースが少ない米ほど多い(表1)。この新規糖質は育種操 作によって低アミロース化された突然変異種においても原品種に比べて明らかに増える(表2)。
- 米を研削式精米装置で極微粉にして加水−抽出の後、エタノール沈殿法で白色固形物 が得られる。これを口に含むとすみやかに溶ける。コムギやトウ モロコシ等には少なく、米に特異的に多い。また多肥栽培の米より少肥で栽培した米に多い(表3)。
- 本質は通常のデンプンとは異なり冷水にすばやく溶ける。加水量を加減するとガム状〜水飴状〜粘液状に変わる。加熱しても糊化しない。分子量基準物 質のプルラン対比で数万〜数百万に相当する多糖であるが、特異なものではなくて、結晶度の低い低分子の水溶性アミロペクチン的な物質らしい。ご飯のオネバの主成分はこの水溶性多糖とみられる。
[成果の活用面・留意点]
- 日本、米国、EUへ関係特許出願中(出願人=中国農業試験場長)。
- 製造には専用粉砕装置、エタノール回収装置、若干の経験等が必要である。
- 本物質の特性や用途には、未解明・未開拓の部分が多く残されている。
[その他]
- 研究課題名:米の粘性多糖・糖蛋白特性の評価
- 予算区分:総合的開発(次世代稲作)、経常研究
- 研究期間:平成10年度(平成6〜10年)
- 研究担当者:堀野俊郎・ 小野田明彦・ 楠本憲一・
三枝貴代(現:農研セ)
- 発表論文等:
- 公開特許公報 特開平10-234315(他に米国特許、EU特許も公開中)
- 中国農試成果記者発表(朝日、読売、毎日、日経等の7紙に掲載)