赤・紫色ばれいしょ塊茎のアントシアンの抗酸化作用
【要 約】
赤及び紫肉色のばれいしょ塊茎から抽出した主要なアントシアンの化学構造を解析した。このアントシアンの新規用途を開拓するために食品化学的性質を測定した結果、化学合成抗酸化剤に匹敵する抗酸化作用が認められた。
- 実施機関・部・研究室名:北海道農業試験場・地域基盤研究部・品質生理研究室
- 連絡先:011-857-9301
- 部会名:北海道(流通利用)、食品
- 専門:加工利用
- 対象:いも類
- 分類:研究
【背景・ねらい】
北海道の畑作物の新しい需要を喚起するために、これまで着目されていなかった形質を遺伝的に改良して有用物質の含量を高め、新規の付加価値の高い食品として利用しようとする別枠研究「新需要創出」が開始された。
この研究では、ばれいしょ塊茎から食品化学的に安定したアントシアン色素を検索し、天然物由来の食品添加物や染料として利用するために、色素の化学構造の解析、色素含量に及ぼす栽培要因の影響、色素の抗酸化性などを明らかにしようとする。
これにより、色価(グラム当たり色素量)を指標にした成分育種によって高含量品種の育成に貢献する。
【成果の内容・特徴】
- 高アントシアン含量の育種素材となる2倍体着色ばれいしょ(赤色品種W872209-5、紫色W872210-13)について、色価の塊茎肥大に伴う消長、色価の株内及び株間変異を測定した。色価は塊茎肥大の初期で高く、後期では低下した。収穫期における株間の色価の平均値の差は無いが、株内の色価の変動係数は40〜58%、小塊茎で大きかった(図-1)。
- 赤及び紫肉色ばれいしょ塊茎から抽出した色素について、その主要なアントシアンの化学構造を各種クロマトグラフィーにより単離・精製し、機器分析(FAB-MSとプロトンNMR)で、糖が3分子結合したアシル化アントシアンであることを明らかにした(図-2)。
- 赤及び紫肉色塊茎から抽出したアントシアンについて、リノール酸に対する抗酸化力をロダン鉄法により1週間測定した結果から、合成抗酸化剤BHA及びBHTに匹敵する能力があった。このことにより、天然物起源の食品添加物として利用できる色素として有望である(表)。
【成果の活用面・留意点】
ばれいしょ塊茎におけるアントシアン生合成経路及び触媒酵素の解明に役立つ。
色素の抗酸化機構の解明に寄与する。
【その他】
- 研究課題名:ばれいしょ塊茎中のアントシアンの特性解明
- 予算区分:大型別枠「新需要創出」、流動研究
- 研究期問:平成5年度(平成3〜5年)
- 研究担当者:石井現相、瀧川重信、森 元幸、梅村芳樹
- 発表論文等:第24回国際園芸学会議 ポスターセッション発表予定、1994年8月、京都