グリコアルカロイドのバイオアッセイ



【要約】

 遺伝子組換えによるトマト等の成分変化を検定する手法の開発の一環として細胞毒性を指標としてトマチン等のグリコアルカロイドの生物検定法を設定した。

【背景・ねらい】

 トマトには、トマチンに代表される有毒なグリコアルカロイド(GA)が含まれており、遺伝子組換え操作等によりGAの含量が変化する可能性がある。GAの変動のアセスメント手法を開発することを目的とし、GAの細胞毒性を指標とするバイオアッセイの検討を行った。

【成果の内容・特徴】

  1. 培養動物細胞を用いてトマチンを細胞毒性として、以下の方法で検出することが可能であった。アラマーブルー蛍光法、MTT色素還元法、ビタミンK3投与化学発光法、WST色素還元法。

  2. ビタミンK3投与化学発光法(図1)は、トマチンとともに細胞を1時間培養し、その後15分の測定操作で測定が終了した。他の方法に比べ感度も高く、投与量と生存率の直線的な比例関係を示す範囲が広かった。

  3. 培養細胞の中ではHepG2が、トマチンの検出および定量には適していた。

  4. トマトの1%酢酸抽出液をSepPak C-18カートリッジで処理することにより、細胞に投与可能な試験液が得られた(図2)

  5. タバコモザイクウイルス病の抵抗性を付与した組換え葉トマトと非組換え葉トマト果実間のトマチン含量の差は見られず、畑の違いによる差も観察されなかった。平成6および7年度のいずれの実験ともに組換え操作によるトマチン含量の変動は観察されなかった(表1)

  6. バイオアッセイ用の試験液を以下の条件下で高速液体クロマトグラフィーを行うことも可能であることが判明した。分析カラム;日本分光製Finepack SIL-NH2(4.6×250o)、移動層;アセトニトエイル:0.02Mリン酸ニカリウムニ3:1、流速;1.0ml/min、測定波長;205nm。

【成果の活用面・留意点】

 トマト果実の成熟に従いトマチン含量は変化する。サンプリング後は、凍結保存する必要がある。また、標準品としてのトマチンはメー力一によって純度が異なることにも注意が必要である。培養動物細胞を用いるバイオアッセイ法は、無菌室等の設備や無菌操作等の習熟が必要である。一般的には、高速液体クロマトグラフを用いる分析評価法から取り組む方が成功率が高いと推察される。

【その他]

研究課題名: 細胞毒性を指標とするグリコアルカロイドの測定法の開発
子算区分: バイテク(組換え体高度利用)
研究期間: 平成7年度(平成5〜7年)
研究担当者: 一色賢司、浅野正博、小塚大生
発表文献等: Some experiments for assessing the food safety of tobacco mosaic virus-resistant tomato,Procceding of the biosafety results of field tests of genetically modified plants and microorganisms,3,p.213-217(1995).バイオアッセイによるトマトの中のトマチンの測定、日本食品科学工学会誌、43,p.275-280(1996).