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(1)アクリルアミドについて
アクリルアミドは、高温加熱によるメイラード反応の一部として、もともと食品中に含まれるアスパラギンと還元糖の反応によって食品中に生ずる物質であり、動物試験では神経の形態への影響や遺伝毒性、発がん性が認められています。FAO/WHO合同食品添加物専門家会合(JECFA)での評価の結果、その毒性と食品からの暴露量からすると、アクリルアミドがヒトの健康に悪影響を及ぼす懸念があるとされています。
(2)日本やアジア地域に特有な加工食品のアクリルアミド分析について
国際的に、アクリルアミドの摂取に寄与する主な食品として、フライドポテト、ポテトチップス、コーヒー、ビスケット、パンがあげられています。この摂取量推定の根拠となった食品のアクリルアミド含有量に関するデータの大部分は、欧州や北米から報告されたものですが、日本でも摂取量推定を行ったところ、日本人も欧米人とほぼ同程度の量のアクリルアミドを摂取していると推定されています。
日本やアジア地域で食される食品は欧米の食品とは異なるものが多いことから、アジア独特の食品についても、精確にアクリルアミド含有量を測定し、必要に応じ低減策を検討していくことが重要です。また、そのための分析の内部質管理(内部精度管理)に利用できる日本やアジアの食品をマトリックスとした標準物質の供給が望まれています。
チャはアジアを中心として世界中で栽培されている工芸作物であり、葉を加工して抽出したものが嗜好飲料(お茶)として利用されています。世界全体で一番多く消費される「お茶」は紅茶です。一方、緑茶の製造・消費はアジア地域に局在しており、特に日本で一番多く製造・消費されている「お茶」は緑茶です。
緑茶の製造には「火入れ」と呼ばれる高温加熱の工程が含まれるため、アクリルアミドが生成される可能性がありますが、日本で生産・消費される緑茶の大部分を占める煎茶をはじめ、ほとんどの茶においてアクリルアミド濃度は100 µg/kgを超えることはほとんどありません。ただし、緑茶の中でもほうじ茶は、コーヒーと同様な高温焙煎により製造されるため、数100 µg/kgのアクリルアミドを含む場合があることが知られています。
茶のアクリルアミド分析方法や分析結果に関する情報は限られており、またその分析の外部質査定のための技能試験も行われていません。
そこで、農研機構食品総合研究所では、代表的なアジア型食品のひとつである緑茶(ほうじ茶)のアクリルアミド分析の内部質管理に使用できる組成標準物質を作製し、ご希望の方にご提供することにいたしました。
ご提供できる組成標準物質は下記の2種類で、ともに約30 gのほうじ茶葉の粉末がアルミ箔積層チャック付スタンディング袋に封入されています。
NFRI-AA001a アクリルアミド含有量 (560±160) µg/kg乾重量
NFRI-AA001b アクリルアミド含有量 (1490±350) µg/kg乾重量
なお、不確かさは、付与値決定のための共同試験で得られた測定値の標準不確かさの2倍(包含係数k = 2 )としました。
このサイトからダウンロードした申込書に記入の上、当研究所食品分析研究領域長宛て[FAX 029-838-7996, Eメール mitsuru(後ろに@affrc.go.jpを追加してください。]にお送りください。
(1)ほうじ茶など焙煎食品のアクリルアミド分析法の改良と、分析を行う試験室の質保証向上に資するため、本標準物質は無料にてご提供いたします。
(2)当分の間、原則として1機関1セットの提供とさせていただきます。
(3)本標準物質を使用して内部質管理を行った結果につきましては、別紙様式の報告書にてご報告ください。今後のアクリルアミド分析法の改良および質管理のための研究用の情報として利用させていただきます。
(4)アクリルアミドの分析に関してのお問い合わせをさせていただく場合もありますので、その際にはご協力をよろしくお願いいたします。
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