コラム
ノシメマダラメイガは辛党か?
唐辛子は虫よけになるというイメージがあるかもしれません。まさかこんな辛いものは虫も食べないと思われるでしょう。ところが、ノシメマダラメイガは香辛料の害虫として問題になります。
七味唐辛子は、赤唐辛子、山椒、青海苔、黒ごま、ちんぴ(温州みかんの皮)、麻の実、けしの実の7種類の成分で構成されています。ノシメマダラメイガは、いったいどの成分を好むのでしょうか。私たちは、新鮮な7成分のそれぞれで、幼虫を飼育して成虫になれるか確かめる実験を試みました。
その結果、赤唐辛子、山椒、青海苔では成虫になれず、黒ごま、ちんぴ、麻の実、けしの実では少数ですが、成虫になることがわかりました。おそらく、幼虫は比較的栄養価が高い「種子」を食べて発育できるのです。ただし、発育には玄米と比べると約1.5から2倍の時間がかかりました。
この実験からわかるように、香辛料の強い香りや辛み成分には、幼虫に対する殺虫効果や忌避効果があるのかもしれません。しかし、鷹の爪や輪切り唐辛子からノシメマダラメイガが発生する事例があります。香りの弱くなった唐辛子であれば幼虫は発育できるようなのです。開封後長期間使う香辛料は、被害にあう可能性が高まります。
香りが落ちたとはいえ辛い唐辛子を食べるノシメマダラメイガはやはり辛党です。さらにチョコレートの害虫としても有名ですから、甘党でもあります。どちらも食べるので、食品害虫として横綱級の昆虫になったのでしょう。
さて、飲食店の香辛料が気になる人がいるかもしれませんね。たとえ香辛料と一緒に虫を食べても健康被害はほとんどありませんし、飲食店の香辛料は使用頻度が高いので回転が速く、虫が繁殖することは滅多にないと思いますので、心配はないでしょう。むしろ、家庭の香辛料の方が心配です。「八味唐辛子」になっていませんか。
参考文献
- 岡田祐一・伊藤景子・鳥居由美・今村太郎・宮ノ下明大 (2004) ペストロジー学会誌 19(2): 109-115.
関連情報
- 図鑑:ノシメマダラメイガ
更新日:2019年02月19日