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近年、人の食生活と健康の関わりに対する関心が高まり、日本の伝統的 飲料である緑茶の持つ機能が見直されている。特に、茶葉中に含まれるカ テキン類には、古くから生活の種々の場面で用いられ知られていた消臭効 果の他、抗酸化作用、抗変異原性、抗腫瘍性、抗菌作用、抗高血圧作用等 数多くの生理活性があることが知られるようになった。 またカフェインは、茶葉、コーヒー豆等の一部植物体に含まれる植物性 アルカロイドで、興奮作用や利尿作用等の生理活性が知られている。 緑茶においてはタンニンとも呼ばれるカテキン類はいくつかのポリフェ ノール化合物の総称で、エピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)、エピ カテキンガレート(ECg)、エピガロカテキンガレート(EGCg)の4種が主に含 まれ、その含有量は、茶種、品質等により差があるが、合計量で茶葉乾燥 重量の10〜15%程度が一般的である1)。ここでは、緑茶の機能性を知る上で 必要な主要なカテキン類4種(EC、EGC、ECg、EGCg)に加え、緑茶中に少量含 まれる主要カテキン類のエピマーである、カテキン(C)、ガロカテキン(GC)、 カテキンガレート(Cg)、ガロカテキンガレート(GCg)の4種のカテキン類 (以下、微量カテキン類)と、カフェインの含有量を同時に高速液体クロマト グラフィーにより定量する方法を述べる。 準備 [器具] 1.シェーカーのついたウォーターバス 2.100ml容のメスフラスコ(首の太いものが使いやすい) 3.使い捨て試料濾過用フィルター (親水性テフロン膜を使用したもの、ポアサイズO.45μm、13mm径) 4.2液グラジェントの出来る高速液体クロマトグラフシステム 紫外検出器(PDA検出器)、カラム恒温槽(40℃が保てるもの)が必須 5.C18逆相カラム(4.6x150mm、Develosil ODS-HG-5、野村化学製) 6.ガードカラム [試薬] 1.アセトニトリル(試薬特級及びHPLC用) 2.85%リン酸(試薬特級) 3.カテキン類標品(三井農林製) 4.カフェイン標品(市販特級品) 標品は各々10mg/100ml程度の濃度になるように精秤し、アセトニト リルと水の混合液(1:9)に溶解し、1ml程度に分注し、密栓をして −20℃以下で冷凍保存する。また、市販の緑茶抽出物を2次的な標 準として使用することもできる。希釈もアセトニトリル:水(1:9) を用いる。 使用の調製 (試料の抽出法は末松らの方法2)に若干改変を加えたもの) 1.粉砕した緑茶試料約500mgを精秤し、メスフラスコに入れる。 2.アセトニトリルと水の等量混合液約80mlを加え、25〜30℃で40分間 ゆっくり振とうする。 3.同じ液で100mlに定容し、良く混合し、しばらく静置した後、上清2ml をフィルターで濾過する。濾過した試料は4℃ (1日を越えるときは−20℃)で分析時まで保存する。 4.HPLCによる分析時に水で5倍に希釈する。 HPLCによる分析 [移動相の調製] 移動相A及び移動相Bをアセトニトリル(HPLC用)、超純水、リン酸を用 いて以下のように調製する。 A液:水-アセトニトリル-85%リン酸(95.45+4.5+0.05、v/v/v) B液:水-アセトニトリル-85%リン酸(49.95+50.O+0.05、v/v/v) (この際リン酸はあらかじめ水で20倍程度に希釈しておくと調製し易い。) [分析条件] 1.検出器、恒温槽、溶媒の流量等の条件は以下の通りとする。 検出波長:231nm(カフェインは274nmの方が感度がよい。また207oを 用いるとカテキン類をより高感度で検出できるが、検量線の直線性が低 下し、妨害ピークが多くなる。) 恒温槽:40℃ 流量:移動相A、移動相Bの合計で毎分1ml 2.移動相溶媒の混合比(グラジエント)は以下のように調整する。 0分から5分:A液90%、B液10%の状態を保つ。 5分から8分:8分の時点でB液の割合が30%になるように、B液の割合を 直線的に増加する。 8分からlO分:A液70%、B液30%の状態を保つ lO分から15分:15分の時点でB液の割合が80%になるように、B液の割合 を直線に増加する。 15分から20分:A液20%、B液80%の状態を保つ。 初期の状態(A液90%、B液10%)の戻し10分以上おいてから次の試料を 分析する。 [定性及び定量] 1.分離された物質の定性は保持時間により行う。PDA検出器を使用する ときはスペクトルを性の補助、及び、ピークの純度確認に用いること が望まれる。 2.定量は標準試料を用いた、内標を用いない絶対検量線法による。通常 はクロマトグラムの積から計算するが、微量物質の場合はピーク高を 用いる方が精度良く定量出来る場合もあので、計算に用いる装置の特 性に注意を払って選択することが必要である。 参考文献 1.Goto,T., Y.Yoshida, I.Amano and H.Horie:Foods and Food Ingradients J.Japan,170,46-52(1996) 2.末松伸一・久延義弘・西郷英昭・松田良子・小松美博:食科工,42, 419-424(1995) 3.Goto,T., Y.Yoshida, M.Kiso and H.Hagashima:J.Chromatogr.A,749 ,295-299(1996) 4.後藤哲久、長嶋等、吉田優子、木曽雅昭:茶業研究報告、 82,21-18(1996) (後藤哲久)
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