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電子顕微鏡を用いて臓器組織の超微細構造の観察を行い、細胞の超微細 構造を観察することが、食品の機能性評価の一助として活用し得ることが 明らかにされつつある。本方法では、機能性成分を含んだ試験食を実験動 物に給餌し、一定期間後に動物を屠殺・解剖し、目的の臓器を摘出し、約 1mm角に細切りし、固定・脱水・包埋の操作により試料ブロックを作製し、 酢酸ウラン、クエン酸鉛の二重染色を施し、透過型電子顕微鏡によって細 胞の超微細構造の観察を行い、細胞に現れる特徴的な変化を観察する。 準備 【器具】 1. 自動包埋恒温器 2. ピンセット 3. カミソリ 4. サンプル瓶 5. ボート付きガラスナイフ 6. 銅メッシュ 7. シャーレ 8. パラフィルム 9. オスミウム溶液瓶 10. Oken自動攪拌滲透機 11. シリコン包埋板 12. ウルトラミクロトーム 13. パスツールピペット 14. ろ紙 【試薬】 1. 2.5%グルタールアルデヒド固定液(冷蔵保存) 脱イオン水 72ml 0.2Mリン酸緩衝液(pH7.2) 90ml 25%グルタールアルデヒド水溶液 18ml 2. 0.1Mリン酸緩衝液(pH7.3、7% sucroscを含む) 3. 1%四酸化オスミウム固定液(オスミウム溶液瓶に冷蔵保存) 2%四酸化オスミウム溶液 25.0ml しょ糖溶液(3.5gしょ糖含有) 12.5ml 0.2Mリン酸緩衝液(pH7.2) 12.5ml 4. 包埋樹脂 Oken EPOK 812 45.6ml DDSA 31.0ml MNA 23.4ml DMP-30 1.8m1 5. 0.9%生理食塩水 100ml 6. 5%酢酸ウラン水溶液 10ml 7. クエン酸鉛水溶液 50ml 硝酸鉛1.33g、クエン酸ナトリウム1.76gを30mlの蒸留水に溶かし1分 間強く振とうし、 その後も時々振って約30分放置8mlの1N NaOHを注ぎ、蒸留水を加えて 全量を50mlとする。 8. エタノール(無水、100%、95%、90%、80%、70%、50%各15ml程度) 9. プロピレンオキサイド 10. 水酸化ナトリュウム 11. 蒸留水 操作の実際 1. 固定操作 調べようとする実験動物の臓器を生理食塩水で洗浄して、2.5%グル タールアルデヒド固定液に浸積する。2〜3分して臓器表面が少し堅 くなった時点で、二枚のカミソリで臓器を1mm角に細切りして2.5% グルタールアルデヒド固定液に4℃2時間浸積し固定する。ついで、 この試料を0.1Mリン酸緩衝液(pH7.3)で4℃、20分ずつ3回、合計60分 洗浄し、さらに、1%四酸化オスミウム固定液に4℃、2時間浸積し、 固定する。 2. 脱水及び樹脂滲透操作 固定後試料ブロックを50%エタノールで15分3回、70%エタノールで 15分3回、80%エタノールで15分3回、90%エタノールで15分3回、 95%エタノールで15分3回、100%エタノールで15分3回、無水エタノ ールで15分3回、プロピレンオキサイドで15分3回、洗浄を行い、試 料ブロックの脱水を行う。プロピレンオキサイド:Epok樹脂(5:5) の混液に一昼夜浸積し、ついで、Epok樹脂に一昼夜浸積し試料ブロ ック中に樹脂を惨透させる。 脱水及び樹脂滲透には、Oken自動攪拌滲透機を用いる。Epok樹脂滲 透後、シリコン包埋板に試料を入れ、上からEpok樹脂を注ぎ、恒温 器に入れ、35℃で12〜24時間、45℃で12〜24時間、60℃で24時間加 熱重合する。 3. 薄切及び染色操作 出来あがったEpokブロックをナイフでトリミングして、試料の面出 しを行う。ガラスナイフをウルトラミクロトームに取り付け、ガラ スナイフ中のボートに、パスツールピペットを用いて蒸留水を満た し、面出しを行った試料ブロックをウルトラミクロトームに取り付け、 超薄切片を作製し、メッシュ上に切片を載せ、ろ紙上で乾燥させる。 バラフィルム上に切片の載ったメッシュを載せ、酢酸ウラン溶液を 加え、シャーレで蓋をして、10〜15分間染色し蒸留水で水洗する。 水洗後、水酸化ナトリウムを入れたシャーレにパラフィルムを敷き、 メッシュを載せ、クエン酸ナトリウム水溶液を加えて、シャーレで蓋 をして、5〜10分間染色し蒸留水で水洗する。 4. 透過型電子顕微鏡による観察 水洗後、ろ紙上で乾燥させ、乾燥後、透過型電子顕微鏡による細胞 の超微細構造の観察を行う。 データの取りまとめ 細胞の超微細構造を倍率2000倍〜50000倍の範囲で1つの細胞につき多数 撮影し、現像・焼き付けを行い、細胞小器官及び脂肪的の形態の特徴を観 察し、サイズをマイクロメーター等を用いて計測する。 参考文献 1) Tamura, M, Suzuki, H.:Internat. J. Nutr. Res., 67, 134-135 (1997) 2) Tamura, M, Suzuki, H.:Internat. J. Nutr. Res., 68, 73-76 (1997) 3) 山田英智:電子顕微鏡生物試料作製法、日本電子顕微鏡学会関東支 部編(丸善)、pp.1-174(1986) 4) 遠山益、 植物試料のための超薄切片法、 山田英智、 石川春律、 野々村 禎昭編(学会出版センター) pp.11-89 (1983) 5) 永野俊夫:透過電子顕微鏡の使い方、山田英智、石川春律、野々村禎昭 編(学会出版センター)pp.41-70 (1981) (田村基)
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