[ ここから本文 ]
生体内酸化ストレスによりフリーラジカルが発生すると、老化や癌、 動脈硬化などさまざまな疾病の原因になると言われており、フリーラジ カルを捕捉する物質はそのような疾病の予防に有用であると考えられる。 食品中にはビタミンC、Eといったよく知られた抗酸化性物質以外にフラ ボノイドなどさまざまなラジカル捕捉能を持つ物質が含まれており、それら の簡便な機能性評価法が必要である。 安定ラジカルであるDPPHを用い、色の変化を見る方法が古くから知ら れているが、その方法では色のある食品には用いることが出来ない。そこ で、ここではHPLCにより食品由来の色素成分を分離することで様々な食 品に応用可能な改良法について説明する。 準備 【器具】 1.HPLC ポンプ、波長517nmの吸収を検出出来るUV-VIS検出器、4.6× 150mm程度のOctrylカラム、20μlのループがついたものインチグ レータがついているとなお良いあらかじめ慣らし運転をしておく (ベースラインが安定するまで)。HPLCの条件は、流速1ml/分、検 出波長517mmとする。流す溶媒は試薬の項参照。 2.pHメーター 3.暗所(段ボールの箱など、暗い場所なら何でもいい) 【試薬】 1.0.1M Tris緩衝液(pH7.4) 100ml 2.500μM DPPH溶液 DPPH(1,1-Diphenyl-2-picrylhydrazyl) 20mg エタノール 100ml この試薬はすぐに使えなくなるので、実験を行う直前に溶液 を作る。冷暗所に保存しても翌日に使用することはできない。 3.標準品 参考文献ではTroloxという物質を使っているが、α-トコフェ ロールを使ってもよい。ここではα-トコフェロールを用いる方 法を述べておく。 エタノール 100ml α-トコフェロール 4.7mg これが100μMの溶液になる。ここから20mlをとり、20mlのエ タノールを加えて希釈すると50μM、さらに2倍に希釈して25μM、 12.5μMを作る。 4.HPLC溶媒 蒸留水 700ml メタノール 300ml それぞれHPLCグレードのものも売っているので、それを使っ てもよい。特級試薬を用いた場合には混合後、0.45μm程度のミ リポアフィルターでろ過する。いずれの場合も、使用直前に超 音波を当てるか、アスピレーターで減圧するなどして脱気する。 操作の実際 1)測定したい試料を200μlの蒸留水またはエタノールに溶かす。それ と共に、ブランクテストとして蒸留水及びエタノール(試料を溶かす のに使ったもの)、比活性測定のためにαトコフェロール標準溶液 (100μM,50μM,25μM,12.5μM)を200μlずつ用意しておく。 2)それぞれに800μlのms緩衝液を加える。 3)1mlのDPPH溶液を加え、よくかき混ぜた後、室温、暗所におき、20分 間反応させる。 4)マイクロシリンジを用いて反応液40μlをHPLCに注入する。(実際には ループの20μgがHPLCにインジェクトされる) 5)インジェクトして8〜10分くらいに出るピークがDPPHによるピークな ので、その面積を測定する(インチグレ一タ付きのHPLCなら容易に出 来る)。 データの取りまとめ まず標準溶液のデータを用いて、標準曲線を作成する。横軸に濃度(0〜 100μM)、縦軸に面積の減少分(ブランクの面積一各サンプルの面積)をと り、グラフを作る。 次に測定したい試料について面積の減少分を計算し、先に作った標準 曲線上、どの値になるのかを見る。もし、あるサンプル10mgが30μMに相 当したら、「そのサンプル10mgはα-トコフェロール30μmol相当のラジカ ル捕捉能がある」と言える。 参考文献 Ymaguchi T., T永amura H.,Matoba T.,Tlcrao J.:Biosci.Biotechnol. Biochem.,62(6),1201-1204(1998) (小林秀誉)
[ ここまで本文 ]