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β-カロテン-15,15'-ジオキシゲナーセは、小腸に存在し、吸収されたプ ロビタミンAをレチナールに変換する反応を触媒する。本酵素はプロビタミ ンAカロチノイドからビタミンAを合成する重要な機能を担うと共に、また、 小腸から体内へ移行するプロビタミンAカロチノイドの量に大きく影響する。 本測定法においては、β-カロチンを組織ホモジネートとインキュベーシ ョンし生成するレチナールをHPLCで定量することによってジオキシゲナー セ活性を求める。 準備 【組織ホモジネート】 試料を5倍量の緩衝液中でPotter-Elvehjem homogenizerを用いてホモ ジナイズする。ホモジネートを遠心分離(10,000g,30min)にかけ、上澄液 を酵素活性測定に用いる。緩衝液:0.154M KCl,lmM EDTA,及び0.lmM dithiothreitolを含む50mM N-(2-hydroxyethyl)piperazine-N'- (2-ethanesulfonic acid)(HEPES)-KOH buffer,pH7.4 【基質溶液】(75μM β-Carotene,0.5mM α-Tocopherol,0.75% Tween40を 含む水溶液) 適当な溶媒に溶解したβ-Carotene及びα-Tocopherolを小試験管にい れアルゴンガス気流中で溶媒を留去する。すぐに、Tween40アセトン溶液 を加え完全に溶解させる。再びアルゴンガス気流中で溶媒を留去する。 Tween40にβ-Caroteneが溶解した透明な液体が残存する。直ちに、Vortex mixerで撹拝しながら脱イオン水を素早く混合させる。完全に透明な溶 液が得られる。 操作の実際 【酵素反応】 小試験管(13x100mm)に60μlの脱イオン水,40μlの0.5M N-tris (hydroxymethyl)-methylglycine-KOH buffer,pH8.0,10μlの10mM Dithiothreitol,40μlの基質溶液をとり混合する。37℃で5分間プレイン キュベーション後、50μlの組織ホモジネートを加え酵素反応を開始させ る。37℃で60分間インキュベーションした後、50μlの37%(w/w)ホルムア ルデヒドを加え反応を停止させる。さらに37℃で10分間インキュベーショ ンした後、500μlのアセトニトリルを混合する。30分以上放置した後、遠 心分離(10,000mm,10min)にかけ上澄液200μlをレチナールのHPLC分析に供 する。コントロールとして反応時間がゼロのものを用いる。 【HPLC分析】 分析条件は下記のとおりである。 カラム:TSK-Ge1 0DS-80Ts(4.6x150mm) 移動相:アセトニトリル:水(90:10,v/v)(0.1%の酢酸アンモニウムを含む) 流速:1ml/min 検出:280nm 試料注入量:200μl レチナールの保持時間は約7分である(図1)。検量線は、all-trans retinalを水:37%ホルムアルデヒド:アセトニトリル(0.2:0.05:O.5,v/v/v) に溶解し200ulをHPLCに注入して求める。 以上の操作は、冷暗所にて行う。組織ホモジネートの調製は暗所で行 う必要はないが、β-カロチン及びレチナールの取り扱いは、異性化や分 解を極力抑えるため、室外からの光や室内の白色灯の照明をカットし、 赤色あるいは薄暗い黄色光下で行うことが望ましい。 図1酵素反応抽出物のHPLC l) Alexandrine Dunng Akihiko Nagao Chimakl Hoshmo JunJl Terao : " Assay of beta~arotene 1 5,15'- dioxygenase activrty by reverse pahse high pressure liquid chromatography" Anal Brochem 241 (2), 1 99-205 (1996) 2) Akihiko Nagao. Alexandnne During, Chimaki Hoshino, Junji Terao and James Allen Olson : " Stoichiometric Conversion of all trans- bcta-Carotene to Retinal by Pig Intestinal Extract" , Arch. Biochem. Biophys., 328 (2 1), 57-63 (1996) (長尾昭彦)
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