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食品アレルギーやアトピー性皮膚炎などによる皮膚反応は主にT型アレ ルギーであり、皮膚に存在するマスト細胞の脱顆粒によるヒスタミン遊離 によって起こることが知られている。そこでヒスタミンをラットの皮内に 投与して起こる血管透過性亢進反応はこれらアレルギー反応の一部を表現 しているモデルと考えられる。この皮膚反応は比較的単純な方法でin vivo のスクリーニング法として用いることも可能である。 準備 【動物】 ラット(SD、Wistarなど、200-300g、5〜6w雄、この週齢のラットはま だ皮下脂肪が少なく、実験しやすいためこれを使用する。) 【実験器具】 分光光度計、実験動物用バリカン、注射針、注射筒、解剖用具など 【試薬】 麻酔用エーテル、ヒスタミン、色素(Direct blueあるいはEvans blue)、 水酸化カリウム、リン酸、アセトン、Tyrode氏液 操作の実際 1. ラットの背部の毛をバリカンで刈る。 2. 皮膚を安定させるため約1時間以上放置後、エーテル麻酔下で、色素 (Direct blueあるいはEvans blue)50mg/kg尾静脈内に投与する。この 色素は血液中のアルブミンと結合するため、組織に漏れでた色素量を 測定すれば血管透過性の指標となる。 3. ただちに、エーテル麻酔下で5〜6カ所に背部皮内に注射する。すばや く打てない場合は、5から10分後に投与しても良い。皮内注射は27Gの 針のついた1mlのツベルクリン注射筒を用いて、ヒスタミン(Tyrode氏 液に溶解させる)を0.1ml/siteで注射する。予め注射位置を円形にスタ ンプしておくと打ちやすい。濃度は3〜300μg/mlで用量依存性を確認 できる。試験物質はヒスタミンと混ぜて投与するか(直接作用)、腹腔 内あるいは経口投与(間接、すなわち全身作用)しておく。この場合血 中濃度を考慮し30〜60分前に投与しておく。 4. 30分後麻酔下に頸動脈を切断し脱血死させる。その血液を一部採取し たのち、完全に放血させる(約10分以上)。 5. 背部の皮膚を剥離し切り取り、裏返しにして注射部位の皮膚を切り取る。 6. 切り取った皮膚片を細かく刻み、ガラス試験管に入れ、1NKOHを1ml加 え、40℃一晩放置アルカリ分解する。0.6Nリン酸(2.5ml)で中和した後、 アセトン(7ml)を加え、遠心(2000xg,20℃, 20min)し、上清の吸光度 (620nm)を測定する。 6. 採取した血液は、1700xg, 20℃, 20min遠心し、血清中の色素量を測 定する。 ラットはセロトニンにもよく反応する。ヒスタミンでなくセロトニン を用いて皮内反応を行っても良い。 データのとりまとめ あらかじめ色素の検量線を作成し、吸光度より濃度を求める式を作成し ておく。採取した血清0.1mlの色素の吸光度を測定し、そのラットの血清 0.1mlの吸光度を求めておく。皮膚より抽出した液の吸光度より、その部位 に漏出した血清量を求める。その単位は浸出速度として、ml/30minと表わ す。ラットの皮内にヒスタミン10mg/siteで投与した時の血清漏出量は、約 70ml/30minである。 参考文献 1) Katayams S., Shionoya H., and Ohtake S.:Jpn. J. Pharmacol., 25 (Suppl) 103p (1975). 2) Qu X. F., Yamaki K., and Oh-ishi S.:Jpn. J. Pharmacol., 57 255-257 (1991). (八巻幸二)
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