ホルスタイン,雌,16カ月齢,鑑定殺例.搾乳用育成雌牛15頭と肥育牛25頭(ホルスタイン雄)が隣接した牛房で飼養されていた.育成雌牛には粗飼料のみが,肥育牛には濃厚飼料が給餌されていた.某日,双方の牛房を仕切る柵が破損し,育成牛と肥育牛が混飼された状態となり2日間のうちに,育成牛7頭が起立不能,体温低下,下痢,呼吸速拍,瞳孔散大を呈し,4頭が死亡した.予後不良の1頭を鑑定殺した. 剖検時,動脈血は暗褐色を呈し,前胃には内容物が充満し,トウモロコシ片が多数みられた.前胃の粘膜は容易に剥離した. 組織学的に,第一胃(提出標本)粘膜上皮は不全角化し,腫大した有棘細胞層は剥離し,好中球の浸潤を伴う膿疱が多発していた(図12).粘膜固有層と粘膜下組織ではリンパ管の拡張と水腫がみられた.第二胃では上皮細胞の壊死や水腫がより重度にみられた.第三胃では粘膜上皮の再生が明瞭で,剥離した部分に好中球の浸潤がみられた.病変部にはグラム陽性球菌や陰性桿菌がみられた. 血液・生化学的検査では,赤血球数は959×104/μl,Htは44%で,第一胃内容のpHは4.4であった. 以上より本症例は肥育用の穀物類の盗食による牛の甚急性ルーメンアシドーシスと診断された. |
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