18 豚の Lawsonia intracellularis による増殖性空腸炎及び豚サーコウイルス2型による肉芽腫性腸間膜リンパ節炎 〔水戸部俊治(山形県)〕

 交雑種,雄,88日齢,鑑定殺例.2008年冬,母豚300頭を飼育する一貫経営養豚場で,離乳豚の発育不良が発生し,死亡豚が増加した.発育不良豚の多くは軟便と跛行を呈していた.発育不良豚の病性鑑定を実施した.

 剖検では,発育不良の他,下顎リンパ節の腫大と空回腸粘膜の肥厚が認められた,結腸ではび爛と偽膜形成が観察された.

 組織学的には,空腸(提出標本)で絨毛の萎縮と陰窩の腺腫様増殖が認められた(図18).粘膜固有層では好酸球,マクロファージ及びリンパ球の中等度浸潤と好中球の軽度浸潤が観察された.腸間膜リンパ節(提出標本)では,び漫性のリンパ球の消失とマクロファージの高度の増殖が認められた.マクロファージの細胞質には豚サーコウイルス(PCV)性の好塩基性封入体が認められた.抗 Lawsonia intracellularis モノクローナル抗体(Bio-X Diagnostics)を使用した免疫組織化学的検査では,空腸の腺腫様増殖した陰窩上皮細胞と一部の絨毛上皮細胞の管腔側縁細胞質内に,やや湾曲した小桿菌が多数検出された.抗PCV2家兎血清(動物衛生研究所)を用いた免疫組織化学的検査では,腸間膜リンパ節及び小腸粘膜固有層のマクロファージに陽性反応が観察された.

 病原検索では,PCV2及び L. intracellularis のPCR検査でおのおの特異遺伝子が検出された.豚コレラウイルスの分離は陰性,PRRSウイルスのPCR検査結果は陰性であった.

 以上より本症例は豚の増殖性腸炎及び豚サーコウイルス関連疾病(PCVAD)と診断された.発育不良豚の増加は,主としてPCV2感染によるものと考えられた.

豚のLawsonia intracellularisによる増殖性空腸炎及び豚サーコウイルス2型による肉芽腫性腸間膜リンパ節炎