25 豚大腸菌症にみられた管内増殖性糸球体腎炎 〔油井 武(埼玉県)〕

 LWD種,雄,40日齢,死亡例.肥育豚約1,000頭を飼養する一貫経営農場において,2009年3月,約40日齢から70日齢の肥育豚に下痢が散発し,約5%の肥育豚が死亡した.本症例は,そのうちの1頭である.

 剖検では,腸間膜リンパ節の腫大と結腸間膜の軽度の水腫がみられた.その他の臓器に著変は認められなかった.

 組織学的に,腎臓(提出標本)ではび漫性,全節性に糸球体腎炎が認められた.糸球体は富核で分葉状に腫大し(図25A),抗Myeloperoxidase家兎血清(DAKO)を用いた免疫組織化学的検査では糸球体に陽性反応が認められた(図25B).樹脂包埋切片のトルイジンブルー染色により,多数の淡明な大型の核をもつメザンギウム細胞または内皮細胞が認められた.PAM染色により,糸球体係蹄壁に肥厚は認められなかった.透過型電子顕微鏡観察により,糸球体の基底膜に電子密度の高い大小の沈着物が観察された.抗豚IgG-FITC標識抗体(Zymed Lab.)を用いた蛍光抗体法及びウサギ抗豚IgG血清(生化学工業(株))を用いた免疫組織化学的検査を実施した結果,糸球体及び尿細管貯留物に陽性反応が認められた.その他,カタル性腸炎がみられた回腸粘膜上皮に多数の桿菌の付着が認められた.

 病原検索では,小腸内容の定量培養で多数の溶血性大腸菌が分離され,分離菌のPCR検査では,定着因子(F18)及び毒素(LT,ST,Stx2e)遺伝子が検出された.ウイルスは分離されず,PCR法による肺乳剤を用いた豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス及び体表リンパ節を用いた豚サーコウイルス2型の検索を実施した結果,いずれのウイルスも検出されなかった.

 本症例は,管内増殖性糸球体腎炎と診断され,豚大腸菌症との関連性が示唆された.

豚大腸菌症にみられた管内増殖性糸球体腎炎