ホルスタイン種,雌,1日齢,死亡例.搾乳牛22頭を飼養する農家で2009年4月2日に予定日から1週間遅れで分娩介助により娩出された子牛が,生後10分ほどで死亡した.母牛は2産目で,1産目は正常分娩であった. 剖検では,肺の左後葉のみが小児頭大に腫大し,小葉間に赤色水様液が貯留していた.また,赤色の胸水・腹水の貯留及び肝被膜の粗造化がみられた. 組織学的に,左肺後葉(提出標本)には軽度の出血を伴う小葉間の拡張及び実質に軟骨を伴わない細気管支様のシスト(図32A)が多数みられた.シスト壁は,N/C比の高い単層の線毛立方上皮細胞(図32B)で構成され,増生した上皮がポリープ状に内腔に突出した像が散見され,腔内には赤血球や剥離上皮がまれにみられた.増生した線維性結合組織が周囲に粗造な壁を構成し,シスト壁直下には弾性線維が高度に認められた.小葉内の他の部位は,肺胞様の組織で構成されていた.肝臓では,び漫性に膠原線維の増生がみられ,小葉構造が乱れていた.胸腺では,多発性に出血がみられた. 本症例の肺病変の肉眼所見及び組織所見は,ヒトの肺奇形の一種である先天性嚢胞性腺腫様奇形(CCAM)のStocker分類TypeUのものとほぼ一致していた.牛でのCCAMの発生報告がほとんどないことから原因は不明であるが,器官形成期における細気管支上皮の増殖異常が疑われた.TypeUCCAMでは他の先天異常を伴うことがあると報告されているが,肝病変との関連性は不明であった.以上から,新生子牛の肺及び肝臓の先天異常と診断された. |
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